神経伝達物質の質と量で心の状態が決まる
神経細胞間で情報をやり取りする際、神経細胞同士は直接結合することはありません。両者の間には20〜30ナノメートルという、ほんのわずかなすき間があります。このすき間をシナプス間隙といいます。
神経細胞内を電気信号で通ってきた情報は、神経終末部分で、神経伝達物質という化学物質に代えられて、シナプス間隙に放出されます。なお、脳のなかには、何種類もの神経細胞があり、それぞれが出す神経伝達物質は1種類です。
一方、情報を受け取る側の細胞の先端には、いくつもの受容体があり、それが放出された神経伝達物質を受け取ります。それぞれの受容体にはぴったりと合う神経伝達物質が決まっています。
神経伝達物質によって伝えられた情報は、受容体と結合後、再度電気信号に代えられます。神経伝達物質は、脳内ホルモンとも呼ばれるもので、その種類と量によって、そのときの心の状態が決まります。
本来、脳の興奮の程度は神経伝達物質によってバランスが保つようコントロールされていますが、強いストレスなどが原因で、神経伝達物質の量の過不足が生じます。場合によっては心の病を発症することがあるといわれています。
ですから、ときには何も考えない時間をつくって、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)で脳内を整理整頓することも大事です。そうすることで神経伝達物質の過不足も整い、心の健康を取り戻せるのです。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』
著:茂木健一郎
シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「脳」について切りこんだした一冊。「なぜ、脳から意識が生まれるの?」「ひと目ぼれは、どうして起きる?」「頭がいいって、どういう人?」人の脳は不思議でいっぱい。身近な疑問でナゾを解明! いまだに解明されない現代科学最大の謎といわれる脳。脳を知ることは、自分自身を知ることです。テレビや雑誌など、さまざまなメディアで活躍する脳科学者の著者が、脳の働きや仕組みを最新のトピックスや知識を使い、図解を交えてわかりやすく解説します。脳力を最大限に発揮させる方法から、「ひらめき回路」の鍛え方、、AI時代の脳の活かし方、脳の機能まで、疑問形式で楽しく読める脳の話が満載。仕事や学習、恋愛、人付き合いなど日常の生活でも役に立つ、脳のエンターテインメント教養本です。脳は自分を映す鏡。人工知能時代に負けない、ヒトの脳の大きな可能性がわかります。
公開日:2020.12.16