どの世界にも流派がある
●自分と異なるタイプの人がいることを理解する
「4スタンス理論」を理解してほしい理由のひとつとして、「自分と異なるタイプの人がいることを理解することで、相手を許せるようになる」ということがあります。なぜそのような動きをするのか、考え方をするのかがわかれば、相手に対して寛容になれるからです。
これは特にチームスポーツでは重要な要素になってきます。茶道の世界に表千家・裏千家があるように、どんな道にも流派があります。それが4タイプによる違いだとすれば、流派同士で争うことには意味がないのです。これは選手を育成する指導者やコーチにもぜひ心に留めていただきたいことでもあります。4つのタイプには、A・B間、1・2間、またはクロス・パラレル間で、必ずどこかに接点があります。その接点で選手を理解し、しっかりと指導することができれば、選手は才能を発揮することができます。
自分とは違うプレースタイルだからと頭ごなしに否定するのは誤りです。選手にはそれぞれタイプがあり、「わかるところから直せばいい」というのが、「4スタンス理論」の本当の使い方なのです。
伝統芸能や古典武術の「形」とは…
日本の伝統芸能や古典武術における「形」は、元は流派のことを指していました。それぞれの流派は行動の指針となる目的を持っているため、形稽古や基本動作を非常に大切にします。日本の自衛隊は優秀だと言われますが、それは、形稽古と同様の基礎訓練で、全体の水準を上げているからだと言えるでしょう。
しかし、ここで間違えてはならないのが、形稽古とは「この形でこう動かなければならない」という形を学ぶものではなく、「相手がこう来たときにはこのように対処する」というシチュエーションの稽古だということです。もとは「形」の稽古だったものが、その解釈を誤ったために、今では本来の「形」の意義を見失っているように思えます。
野球で言えば「右投手のストレートを打ち返す」というのが形稽古ですが、単にバットを振る「形(かたち)だけの」稽古になってしまったということです。「形」や「流派」を正しく認識することは、「4スタンス理論」でほかのタイプを理解するのと同じように重要なこと。今一度、見直してみてはいかがでしょうか。
【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一
「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!
公開日:2021.05.06