狭めて絞って解き放つ ジェットエンジンが生む驚異の推力【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】


圧縮機から排気まで
徐々に狭くしながら圧縮し広げて燃焼後に絞る
空気は、エンジンの中に入ると、ファンと同軸の低圧圧縮機でまずは圧縮されます。
そして高圧圧縮機に向かいます。高圧圧縮機は文字通り高圧で圧縮するところで、奥に行くほど狭くなっていきます。なぜ狭いのかといえば、体積が圧縮されて小さくなった空気の速度を、一定に保つためです。
そして高圧圧縮機からを出る時は、約30から40倍以上に圧縮されています。
圧縮されて十分にエネルギーを持った空気は、燃焼に都合のよい速度と圧力に調整するため、ディフューザーと呼ばれる、広い通路を抜けて燃焼室に入ります。
燃焼室で燃料と混合したガスに点火させる装置は、自動車のガソリン・エンジンと同じ点火プラグですが、自動車とは違ってエンジン・スタートの時にだけ働き、その後は連続的に燃焼するので必要ありません。燃焼温度は1300℃以上にもなります。
圧縮に加えて、熱エネルギーを蓄えたガスは、エネルギー効率を高めるため徐々に膨張させながらタービンを回す仕事にかかります。高圧タービンで高圧圧縮機を高速で回転させ、まだ十分あるエネルギーにより、低圧タービンで低圧圧縮機と同軸のファンを回転させます。
タービン、つまりファンと圧縮機を回転させた後も、なお余ったガスの圧力エネルギーは速度エネルギーに変換、言い換えれば加速して噴出するため排気ノズルは絞ってあるのです。
ジェット・エンジンを覆っているビア樽のようなエンジン・ケースの中身は、決して寸胴(ずんどう)ではなくスマートな形をしています。
エンジン各部の名称

ファンと低圧圧縮機、それを回す低圧タービン、そして高圧圧縮機とそれを回す高圧タービンは、それぞれ独立して駆動する2軸式になっています。
燃焼室の最高燃焼温度は 1300℃以上になりますが、火山灰が溶ける温度でもあるので、もしエンジンが火山灰を吸い込んだ場合には溶けた火山灰がタービンに付着してしまいエンジンに甚大な被害を与える可能性が高いため、噴火した周辺は飛行しないようにしています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』著:中村 寛治
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』
著:中村 寛治
「飛行機はなぜ、どうやって空を飛べるのか」という基本から、最新の知識、身近な航空雑学まで、飛行機の魅力をたっぷり図解でわかりやすく教える一冊。
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