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なにが得で、微生物は小さくなったの?【微生物の話】

Text:山形洋平

極小化して高代謝活性と増殖能力を手にした微生物

細菌の細胞は1〜10㎛くらいですが、一般的な真核細胞の大きさは、この5~100倍くらいの大きさです。なぜこんなに大きさに差があるのでしょうか。また、こんな小さい細胞で生きていくことにどんな良いことがあるのでしょう。

細菌の細胞にも私たち真核生物と同じように染色体があります。細菌のなかでもよく研究されている大腸菌の染色体の長さは464万塩基対、納豆菌の仲間の枯草菌の染色体は421万塩基対(塩基対とは、DNAを構成する核酸の相補的なペアがいくつあるかを表したもの)であるのに対して、ヒトの染色体の長さは、約30億塩基対。大きさの差は、だいたい700倍くらいです。

染色体を長さで比較すれば、ヒトの染色体を全部つなぐと約1mちょっとくらいになりますが、大腸菌や枯草菌のゲノムは、1.3~1.4㎜ほどしかありません。また、細菌の細胞内には細胞内小器官が存在せず、そのため細菌は増殖しようとすると、真核細胞に比べて圧倒的に速く増殖が可能なのです。

例えば、ベストな条件では、大腸菌は約20分で2倍に増殖することができます。これに対して、真核生物で最速と思われる酵母では1時間以上かかり、人の細胞なら1日程度かかります。真核細胞は、長い染色体を複製し、細胞内の小器官もすべてつくってから初めて分裂することになります。ですが、細菌の細胞は小さく、細胞内に細胞内小器官などがないため、余計なものをつくらずとも染色体の複製さえできれば、ほぼ細胞分裂の準備ができたも同然なのです。

細菌のように増殖が20分ですむのなら、1時間で3回増殖するため、2×2×2=8倍になります。1つの細胞からスタートして、1日では、(2×2×2)を24回かけた数になるため、47垓(がい)(4,700,000,000,000,000,000,000)個の大腸菌に増殖します。

大腸菌細胞1つの大きさは、0.5㎛×2㎛くらいの楕円形をしていますが、これを1㎛の球形として計算すると、1つの大腸菌の体積はおおよそ0.000,000,000,000,000,000,52㎥になります。これに掛ける5,875㎥となるので、1つの細胞からスタートして、1日経つとおおよそ18mの立方体くらいの体積にギチギチに詰めたくらいに増えてしまうことになります。

酵母の増殖が1時間なので、1日で16,777,216倍にしか増えません。そうすると、自分たちの優勢を決めるのが、増殖スピードをいかに速くするかにかかっていることがわかると思います。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 微生物の話』
著者:山形洋平  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1961年生まれ。東京農工大学農学部農芸化学科卒業。東北大学大学院農学研究科農芸化学専攻(博士課程後期)修了。東北大学農学部助手、東京農工大学共生科学研究院准教授、東京農工大学大学院農学研究院准教授を経て、現在は東京農工大学大学院農学研究院教授。農学博士。趣味は、醗酵食品の食べ歩きと醸造飲料の飲み歩き。


「微生物」は私たちの身の回りにあふれている! ウイルス、細菌(バクテリア)、菌類(酵母、カビ、キノコ等)など、とても小さく顕微鏡でなければ見えないけれど、私たちの生活のさまざまに関係、影響している。「ウイルスの正体は?」「毎日のように口にする味噌、醤油、酢などの調味料、またビール、ワイン、日本酒をつくる醗酵とは?」「私たちのお腹の中に棲む数百種類100兆個もの細菌の役割は?」———地球上に最初に誕生し、ヒトをはじめとするあらゆる生物の進化や暮らしに影響を与え続けてきた存在でありながら、まだまだ多くの謎や不思議に包まれいる「微生物」。その謎と不思議をわかりやすく図解で伝える。微生物のことがわかると、生活上のいろんな疑問もすべて納得、解決する!

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