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マホービン(魔法瓶)が熱を逃がさないワケは?デュワー瓶の熱の伝わり方【物理の話】

Text:長澤光晴

デュワー瓶の熱の伝わり方

マホービン(魔法瓶)は、熱い飲み物は冷めにくく、冷たい飲み物はぬるくなりにくいという、保温性に大変優れた容器です。

最近は、コーヒーサーバーの容器にもよく使われています。マホービンは、イギリス人のデュワーによって発明されたので、デュワー瓶とも呼ばれます。

ここでは、マホービンのしくみについて考えてみましょう。

熱の伝わり方には、大きく分けて熱伝導・対流・輻射(ふくしゃ)の3つがあります。熱伝導は〈温度の高い物が温度の低い物に接触する〉、対流は〈熱を持った物が移動する〉、輻射は〈温度の高い物が放射する赤外線を温度の低い物が吸収する〉ことで熱を伝えます。

マホービンは、これら3つの影響を極力小さくしたものです。

マホービンは二重構造になっていて、外壁と内壁はできるだけ接触しないしくみです。熱伝導を抑えるため、壁には熱を伝えにくくて丈夫な物質、主にガラスやステンレスが使われます。また、空気による対流を抑えるため、2つの壁の間の閉鎖された空間は真空状態にされます。

最後は輻射です。輻射による熱の移動を小さくするためには、向かいあう外壁と内壁との間の赤外線のやり取りを抑えればよいのです。

赤外線は光の仲間なので、条件が揃えば反射させることができます。吸収をさせたくなければ、よく反射させる状態にすればよいのです。そのために、外壁と内壁が向かいあう面はメッキを施されたり、磨かれたりするなどして、鏡のようにピカピカになっています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 物理の話』
著者:長澤光晴  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1967年生まれ。東京理科大学理工学部物理学科卒業。北海道大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。東京電機大学工学部基礎教育センター・工学部環境化学科准教授、フランス国立極低温研究所(CRTBT)客員研究員(2001年)を経て、現在は東京電機大学工学部自然科学系列・工学研究科物質工学専攻教授。博士(理学)。日本物理学会所属。著書に『面白いほどよくわかる物理』(日本文芸社)がある。


水洗トイレ・冷蔵庫からジェトコースター、スケート、虹、オーロラ、飛行機、人工衛星・GPSまで身の回りにある物や現象のしくみが面白いほどよくわかる!文系の人でも理解できるよう、とにかくわかりやすく、またとにかく図を使ってうまく説明しました! 本書で扱ったテーマは、身の回りにそれとなくある物や現象です。それらの仕組みを知らなくても生きてはいけますが、知っていればなかなか楽しく暮らしていける、そんなものばかりです。物理の醍醐味は、いろいろな現象を少数の法則や定理そして少しの仮定で取り扱うことができるところにあると思います。

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