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樹脂などでこすると、書いた字を消せるボールペンのしくみとは?【物理の話】

Text:長澤光晴

消せるボールペンのしくみ

最近、樹脂などでこすると、書いた字を消せるボールペンが人気です。

このボールペンに使われているインクには、一旦65℃に加熱されると、冷めても色が消えたまま(無色)になる特性があります。そのため、このボールペンで書いた字は、樹脂と紙をこすりあわせて摩擦熱を発生させれば消えてしまいます。

このインクが面白いのは、熱で消えた字が、マイナス20℃以下に冷やすと元の色に復活(復色)するところでしょう。家庭用の冷蔵庫の冷凍室(約マイナス18℃)ではちょっと難しいですが、ドライアイスや液体窒素を使うと、この性質を確認できます。

現在の鉛筆の芯は、黒鉛と粘土を混ぜたものを約1000℃で焼いた後、油をしみ込ませて作られます。シャープペンシルの芯は、粘土の代わりに高分子樹脂が使われます。

なお、黒鉛のシート1枚はグラフェンと呼ばれ、これを発見したガイム氏、ノボセロフ氏は2010年度のノーベル物理学賞を受賞しました。グラフェンは原子1層分の厚さしかないので、透明性が高く、電気を流しやすい性質を持ちます。この性質を利用して、ディスプレー電極などへの応用研究が精力的に行なわれています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 物理の話』
著者:長澤光晴  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1967年生まれ。東京理科大学理工学部物理学科卒業。北海道大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。東京電機大学工学部基礎教育センター・工学部環境化学科准教授、フランス国立極低温研究所(CRTBT)客員研究員(2001年)を経て、現在は東京電機大学工学部自然科学系列・工学研究科物質工学専攻教授。博士(理学)。日本物理学会所属。著書に『面白いほどよくわかる物理』(日本文芸社)がある。


水洗トイレ・冷蔵庫からジェトコースター、スケート、虹、オーロラ、飛行機、人工衛星・GPSまで身の回りにある物や現象のしくみが面白いほどよくわかる!文系の人でも理解できるよう、とにかくわかりやすく、またとにかく図を使ってうまく説明しました! 本書で扱ったテーマは、身の回りにそれとなくある物や現象です。それらの仕組みを知らなくても生きてはいけますが、知っていればなかなか楽しく暮らしていける、そんなものばかりです。物理の醍醐味は、いろいろな現象を少数の法則や定理そして少しの仮定で取り扱うことができるところにあると思います。