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冬のよく冷え込んだ早朝に普段聞こえない遠くの踏切や列車の音などが聞こえるワケとは?【物理の話】

Text:長澤光晴

放射冷却での音の速さと屈折

冬のよく冷え込んだ早朝には、ふだん聞こえない遠くの踏切や列車の音などが聞こえてくることがあります。この現象はどうして起きるのでしょう?

夜間、空に雲がなければ地面から放射される赤外線は宇宙空間へ行ったきりで帰ってきません。赤外線の持ち去ったエネルギーの分、地面の温度は下がります。この放射冷却現象によって地面が強く冷やされると、上空へいくほど空気の温度が高くなる逆転層が形成されます。

空気中の音速Vは、空気の温度がτ℃のとき、V =331.5+0.6τ(m/s)となります。暖かい空気ほど音は早く伝わるのです。

空気中を伝わる音は波の一種です。そのため、❶のように、

暖かい空気(音速Vi)と冷たい空気(音速Vi-1)が接している境界面で音は屈折します。点pでの音の入射角をθi-1、屈折角をθiとすれば、

という、音の速さに関係した屈折の法則が成立します。

このような空気の層が高さ方向へ無数に連なっていると、地表の音源から出発した音は境界面を通過するごとに屈折し、やがてどこかの境界面で全反射して今度は地上へ向かいます。逆転層のように空気の温度が高度によって連続的に変化している場合も同じですが、❸のように

屈折は連続的に起こり、音のたどる経路は上に凸の曲線になります。

つまり、なんらかの理由で逆転層が出現すれば、いつもなら建物や丘陵などの障害物で遮られて直接には届かない音が聞こえてくるようになるのです。

❸のように、地表に戻る音のたどる経路は、全反射をしている頂点を境に左右対称です。そのため、仮に地表の下に上下対称の逆転層が広がっていれば、音は地表を中心に上下運動を繰り返しながら水平方向へ進むことになります。

この現象は、グレーデッドインデックス型の光ファイバーにも利用されています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 物理の話』
著者:長澤光晴  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1967年生まれ。東京理科大学理工学部物理学科卒業。北海道大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。東京電機大学工学部基礎教育センター・工学部環境化学科准教授、フランス国立極低温研究所(CRTBT)客員研究員(2001年)を経て、現在は東京電機大学工学部自然科学系列・工学研究科物質工学専攻教授。博士(理学)。日本物理学会所属。著書に『面白いほどよくわかる物理』(日本文芸社)がある。


水洗トイレ・冷蔵庫からジェトコースター、スケート、虹、オーロラ、飛行機、人工衛星・GPSまで身の回りにある物や現象のしくみが面白いほどよくわかる!文系の人でも理解できるよう、とにかくわかりやすく、またとにかく図を使ってうまく説明しました! 本書で扱ったテーマは、身の回りにそれとなくある物や現象です。それらの仕組みを知らなくても生きてはいけますが、知っていればなかなか楽しく暮らしていける、そんなものばかりです。物理の醍醐味は、いろいろな現象を少数の法則や定理そして少しの仮定で取り扱うことができるところにあると思います。

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