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人は気温が同じでも、湿度が高いと不快を感じるワケとは?【物理の話】

Text:長澤光晴

湿度と水蒸気・不快指数

蒸し暑いときに人が感じる不快さには湿度が大きく関わっています。湿度は、

(湿度)=(空気に含まれている水蒸気の量)÷(空気が含むことのできる最大の水蒸気の量)×100%

として決められる量です。

ふつうの温度でも水は、周りから熱(気化熱:水1gあたり2260ジュール)を奪って水蒸気になることができます。また、乾燥した空気ほど素早く水蒸気を取り込めます。

洗濯物を太陽の下で干すと速く乾くのは、洗濯物に含まれている水が水蒸気になるのを太陽光線の持つエネルギーが助けるからです。

では、湿度と不快さとにはどのような関係にあるのでしょうか?

人は、体温が高くなると皮膚の汗腺から汗を出して水分を蒸発させ、その気化熱で身体を冷して体温を一定に保つように調整しています。ところが、湿度が高いと汗の水分は蒸発しにくくなり、体温を下げられません。このようなときに不快な蒸し暑さを感じるのです。

当然ですが、気温が同じでも湿度が高ければ不快に感じます。また、湿度が同じでも気温が高くなると不快さが増します。

このような不快さを数値化する試みの一つに、1950年代にアメリカで提案された不快指数があります。算出式は何種類かありますが、そのうちの1つが気温をθ、湿度をhとして、

(不快指数)=0.81×ϑ+0.01×h×(0.99×ϑ-14.3)+46.3

とするものです。不快指数に意味があるのは70~90程度で、不快指数が75以上のときにやや暑い、80以上のときに暑くて汗が出る、85以上のときに暑くてたまらない、と感じるようです。

ただ、風速1メートルにつき体感温度は1度下がると言われるように、風が吹けば水分の蒸発するスピードが速くなって不快さが緩和されます。

そのため、不快指数は絶対的な指標ではなく、おおよその目安程度に考えるほうがよいでしょう。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 物理の話』
著者:長澤光晴  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1967年生まれ。東京理科大学理工学部物理学科卒業。北海道大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。東京電機大学工学部基礎教育センター・工学部環境化学科准教授、フランス国立極低温研究所(CRTBT)客員研究員(2001年)を経て、現在は東京電機大学工学部自然科学系列・工学研究科物質工学専攻教授。博士(理学)。日本物理学会所属。著書に『面白いほどよくわかる物理』(日本文芸社)がある。


水洗トイレ・冷蔵庫からジェトコースター、スケート、虹、オーロラ、飛行機、人工衛星・GPSまで身の回りにある物や現象のしくみが面白いほどよくわかる!文系の人でも理解できるよう、とにかくわかりやすく、またとにかく図を使ってうまく説明しました! 本書で扱ったテーマは、身の回りにそれとなくある物や現象です。それらの仕組みを知らなくても生きてはいけますが、知っていればなかなか楽しく暮らしていける、そんなものばかりです。物理の醍醐味は、いろいろな現象を少数の法則や定理そして少しの仮定で取り扱うことができるところにあると思います。