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夕方の雨が上がったあとの空に、半円状の鮮やかな色の虹が出現するワケとは?【物理の話】

Text:長澤光晴

太陽光の分散と屈折率

夕方の雨が上がったあとの空には、半円状の鮮やかな色の虹が出現することがあります。

ここでは、虹のしくみについて考えてみましょう。

夕方の空に現れる虹は、太陽を背にして立ったとき、水平から約40度の角度付近に、外側から内側に向かって赤・橙・黄・緑・青・紫の順に見えるのが普通です。光の色が分かれて見えるのは、虹があるように見えている付近で白色光(いろいろな色が混ざった光)が分散されていることを示しています。

分散とは、プリズムに入射された白色光がいろいろな色に分離されて出てくる現象です。プリズムの屈折率が光の色、つまり光の波長によって異なることが原因です(❶の表)。

光の色と波長の関係

虹を出現させる白色光は太陽の光です。また、虹があるように見えている付近には丸く小さな水滴が無数にあります。水はプリズムと同じように波長の短い光に対する屈折率が大きい(❶)ので、赤よりも青い光をより大きく屈折させるのです。

❷は、水平に進んできた夕方の太陽光線が、水滴に入射してから出るまでの間にたどる一番単純な経路を、屈折の法則を使って描いたもので、水滴から出る光線が、太陽光線と約42度の角度をなす方向にもっとも集中する様子が見てとれます。地上にいる観測者は、この強くて明るい光を見ているのです。

反射に色の違いはありませんが、2回の屈折では分散によって色が大きく分かれます。そのため、赤い光は先ほどの約42度の角度で、青い光は少し低い角度で観測者に向かって来るのです。

これらの光は、太陽・水滴・観測者の角度で決まる円すい面に沿って観測者へ向かってきます。そのため、夕方の虹は半円状になり、太陽高度が高い日中の虹は40度よりも低いところに現れるのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 物理の話』
著者:長澤光晴  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1967年生まれ。東京理科大学理工学部物理学科卒業。北海道大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。東京電機大学工学部基礎教育センター・工学部環境化学科准教授、フランス国立極低温研究所(CRTBT)客員研究員(2001年)を経て、現在は東京電機大学工学部自然科学系列・工学研究科物質工学専攻教授。博士(理学)。日本物理学会所属。著書に『面白いほどよくわかる物理』(日本文芸社)がある。


水洗トイレ・冷蔵庫からジェトコースター、スケート、虹、オーロラ、飛行機、人工衛星・GPSまで身の回りにある物や現象のしくみが面白いほどよくわかる!文系の人でも理解できるよう、とにかくわかりやすく、またとにかく図を使ってうまく説明しました! 本書で扱ったテーマは、身の回りにそれとなくある物や現象です。それらの仕組みを知らなくても生きてはいけますが、知っていればなかなか楽しく暮らしていける、そんなものばかりです。物理の醍醐味は、いろいろな現象を少数の法則や定理そして少しの仮定で取り扱うことができるところにあると思います。