LOVE SPORTS

  • HOME
  • 書籍
  • 光源氏は亡き母に似た女性に思いを寄せていた!?平安時代は男性主導の恋愛だった!【図解 源氏物語】

光源氏は亡き母に似た女性に思いを寄せていた!?平安時代は男性主導の恋愛だった!【図解 源氏物語】

Text:高木 和子

亡き母に似た藤壺との出会い

更衣が亡くなったあと、若宮は北の方に育てられましたが、6歳のときにその祖母も他界し、宮中で暮らしはじめます。その美貌と才能によって皆にかわいがられる存在になりました。帝は、第一皇子を東宮に決めましたが、その後も、内心では何かと若宮を東宮にできないかと思案します。高麗(こま 中国東北部から朝鮮半島北部にあった渤海国)の人相見に若宮の将来を占わせたところ、「天皇になる相だが、そうなると世が乱れる。だが重臣になって国政を補佐する相でもない」と首をかしげました。帝は思案の末、若宮を臣下にし、「源(みなもと)」という姓を与えます。その光り輝く若宮を、人々は「光る君」と呼ぶようになりました。

さて、帝は亡き先帝の(せんてい)の四の君(しのきみ)が桐壺更衣に似ていると聞いて入内を求めます。桐壺更衣の悲劇を知る母后(ははきさき)は戸惑っていたものの、母后の他界後に入内して藤壺(という名前と部屋)を賜りました。その容姿はすばらしく、不思議なほど桐壺更衣に似ています。源氏から見て、かなり年上の女御や更衣ばかりの中、藤壺はいくつか年上な程度で、その若さと美しさに惹きつけられました。源氏には母の記憶がないだけに、女官から「お母様によく似ていらっしゃいます」と聞けば、いっそう藤壺への思いを募らせるのでした。帝は藤壺は、「あなたは源氏の母によく似ているので、源氏が慕うのも無理ない。かわいがっておやり」と頼みました。

源氏は12歳で元服(げんぷく)し、その儀式は、前年に行われた東宮の元服に劣らないようにと盛大に行われました。その夜、左大臣の娘である葵の上(あおいのうえ)が添臥(そいぶし)に選ばれ、そのまま源氏と結婚することに。結婚後も、源氏の藤壺への思いは変わりません。「葵の君は大切に育てられた方なのだろうが、心惹かれるものがない」などと思い、藤壺のことだけが苦しいほど思われるのでした。

入内・・・天皇の妻になる人が正式に内裏(天皇居住の御殿)に入ること。
元服・・・男子が成人になったことを社会的に承認し、祝う儀式。
添臥・・・元服を終えた東宮や皇子に、当夜、女子を選んで添い寝させる風習があり、選ばれた女子を添臥という。

平安女性の暮らし

平安時代の女性は外出もほとんどせず室内で過ごした。恋愛も男性主導で、訪ねてくるのを待つだけ。男性と直接顔を合わせる機会も少なかったため、香りや文で趣味のよさをアピールしていた。とくに香りは重要で、自分好みで練香(ねりこう)を調合し、衣装に香りをつけるための薫物(たきもの)、空間に香りを漂わせる空薫物(そらたきもの)など、さまざまな方法で香りを利用していた。主君に仕える女房の暮らしの一コマを見てみよう。

光源氏は亡き母に似た女性に思いを寄せていた!?平安時代は男性主導の恋愛だった!【図解 源氏物語】

①几帳(きちょう)
②吊香炉(つりこうろ)・・・吊して使用する香炉。中に好みの香を入れて炊いた
添臥・・・元服を終えた東宮や皇子に、当夜、女子を選んで添い寝させる風習があり、選ばれた女子を添臥という。
③御簾(みす)・・・葦(あし)や竹を編んで垂らして、空間の仕切りとして使用。仕切りを取り除くときは、巻き上げた。「すだれ」ともいうが、貴人の家の場合は「みす」と呼んだ。
④伏籠(ふせご)・・・練香を火取香炉(ひとりこうろ)で燻(くゆ)らし、その上に伏籠という竹の籠を置き、その上に装束をかけて香を移した。
⑤二階棚(にかいだな)
⑥打乱箱(うちみだりのはこ)・・・もとは手ぬぐいを入れるものだったが、その上で髪を梳(す)いたり、中に化粧道具、その他を入れて使用した。蓋のある浅い長方型の箱だが、蓋を開けて使用したり、のちには蓋のないものも出た。
⑦唾壺(だこ)・・・もともとは唾液や痰を吐き入れる壺だったが、平安時代には室内装飾の道具となった。
⑧泔坏(ゆするつき)・・・米のとぎ汁や強飯(こわいい 米を蒸した固めの飯)を蒸したあとの湯を「泔」といい、髪を洗ったり梳いたりするときに用いられていた。「泔坏」は泔を入れておく器で、尻碗(しりわん)という台に載せて、さらに5脚の台に載せ置かれた。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』高木 和子 監

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』
高木 和子 監修

平安時代に紫式部によって著された長編小説、日本古典文学の最高傑作といわれる『源氏物語』は、千年の時を超え、今でも読み継がれる大ベストセラー。光源氏、紫の上、桐壺、末摘花、薫の君、匂宮————古文の授業で興味を持った人も、慣れない古文と全54巻という大長編に途中挫折した人も多いはず。本書は、登場人物、巻ごとのあらすじ、ストーリーと名場面を中心に解説。平安時代当時の風俗や暮らし、衣装やアイテム、ものの考え方も紹介。また、理解を助けるための名シーンの原文と現代語訳も解説。『源氏物語』の魅力をまるごと図解した、初心者でもその内容と全体がすっきり楽しくわかる便利でお得な一冊!2024年NHK大河ドラマも作者・紫式部を描くことに決まり、話題、人気必至の名作を先取りして楽しめる。