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大きな翼のような脚を広げて獲物を囲い込む【ハンター生物の話】

Text:今泉忠明

コウモリ

コウモリは、鳥と同じように動力飛行ができる唯一の哺乳類です。翼に見えるのは実は前脚で、指と指の間の飛膜が翼の役割を果たしています。夜空をバタバタと不規則に飛び回るコウモリは、一見効率の悪い飛び方をしているように見えますが、運動能力は極めて高く鳥以上に小回りがきくと言われています。

世界中に1000種類もいると言われるコウモリは、昆虫を食物にするもの、果実を食べるもの、魚が主食のものなどさまざま。カエルを食べるカエルクイコウモリや、ウサギのような大きな耳をしたニホンウサギコウモリなどがいます。ちなみに、夕暮れになると市街地で見かけるコウモリのほとんどはアブラコウモリで、蛾やハエ、ハチなどの昆虫を捕食します。

夜行性のコウモリはほとんど目が見えませんが、獲物を探すために超音波を発してレーダー代わりにしています。そのレーダーは獲物の存在や大きさ、獲物との距離などを瞬時に測れるほどとても正確。人間にも聞こえる1万㎐の低い音から、人間には聞こえない15万㎐の高い音までを断続的に発しながら、反響音を聞いて周囲に獲物がいないか探っています。

例えば、カエルクイコウモリは、超音波を発してカエルがいる位置が分かるのはもちろん、射程圏内にいるカエルが毒を持っているかどうかを鳴き声で判断します。カエルとしても捕食されたくないので、近くに敵の気配を感じると鳴くのをやめてじっと息を潜めます。ただ、鳴くのをやめても数秒間は水面に波紋が残ってしまうのが現実。カエルクイコウモリのレーダーは、この波紋ですら感知できてしまうほど繊細で正確なのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 ハンター生物の話』
監修:今泉忠明 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
国立科学博物館で哺乳類の分類学・生態学を学ぶ。
上野動物園の動物解説員を経て、「ねこの博物館」(静岡県伊東市)館長。著書も多数。

図解シリーズで解説するハンター生物の話‼
ライオン、大鷲、ホオジロザメなど陸・海・空・川のハンター生物の狩りの方法をイラスト付きで紹介する一冊です。
単に子ども向けの図鑑ではなく、イラストと文章できちんと動物の生態を解説。
動物が生きるために、どのような工夫をしているのかを紹介します。