化石人類は25種
現在、最古の人類はアフリカで約700万年前に出現した猿人「サヘラントロプス・チャデンシス」と考えられています。2001年にアフリカのチャドでチャデンシスの化石が見つかったからです。約600万年前には「オロリン・ツゲネンシス」、約400万年前から「アウストラロピテクス属」が登場し、以後、新たな人類が現れては絶滅し、また新たな人類が登場するという繰り返しが続きます。発見されているだけで化石人類は25種だといいます。では、どんな人類が「火」を使ったのでしょうか。おそらく180万年前から5万年前に生きていた原人「ホモ・エレクトゥス」(学名)ではないか、と推測されています。ホモとはヒトのことで、エレクトゥスとは直立すること。つまり、「直立するヒト」を表します。このホモ・エレクトゥスの棲む南アフリカの洞窟「スワルトクランス」から、150~100万年前に焼けた獣の骨が見つかりました。しかも骨が集中していた。だから、エレクトゥスは火を管理し、獣肉を焼いていたのだろうと思われたのです。エレクトゥスが自ら火を起こしたとは考えにくいので、火山噴火や落雷などによる山火事(図1)の火を利用したのでしょう。
ですが、火の利用は画期的なことで、夜の明かりや暖かさ、猛獣から身を守る術にもなりました。エレクトゥスかどうかはわかりませんが、やがて木と木を擦り合わせたり、石と石を打ち叩いたりして火をつくり出します。火を自在に使えるようになると、動物の肉や魚を焼く調理が発達し、タンパク質の摂取が容易になります。そうして脳が大きくなっていったのです。火が燃える、「燃焼」ですね。これは燃えやすい物質を酸素が反応して熱と光を出す現象で、「化学反応」のこと。火の利用とは、化学反応の利用ということです。人類はやがて火で焼けば粘土が硬くなることを知り、土器(図2)などを作るようになります。土器は煮炊きや貯蔵を可能にし、火の用途は拡大します。つまり、人類は偶然が教えてくれた「化学反応」をとば口として、文明の発展につなげていったのでしょう。
粘土を成形し、焼成した縄文土器
※1856年、ドイツのネアンデル谷(タール)で化石が発見されたネアンデルタール人(推定30~4万年前)は学名ホモ・ネアンデルターレンシス。ホモ属としては、ほかにハビリス(推定240~135万年前)、ハイデルベルゲンシス(推定75~20万年前)、フロレシエンシス(推定10~5万年前)ほかが発見されている。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』野村 義宏・澄田 夢久
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』
野村 義宏 監修・著/澄田 夢久 著
宇宙や地球に存在するあらゆる物質について知る学問が「化学」。人はその歴史の始めから、化学と出合うことで多くのことを学び、生活や技術を進歩・進化させてきました。ゆえに、身近な日常生活はもとより最新技術にかかわる不思議なことや疑問はすべて化学で解明できるのです。化学的な発見・発明の歴史から、生活日用品、衣食住、医学の進化までやさしく解明する1冊!
公開日:2023.09.01