足利事件などで考える、DNAの落とし穴
裁判において、DNA型鑑定が現行のSTR法でなく、まだ精度があまり高くなかったころに起こった事件の証拠試料の再鑑定などの検査を行い、真実解明に向けて取り組んでいます。
1990年5月、栃木県足利市で女児の遺体が発見され、91年12月に幼稚園のバス運転手だった菅家利和さんが逮捕されましたこれが「足利事件」です。
遺体発見現場周辺から発見された女児の下着に付着していた精液のDNA型と、菅家さんのDNA型が一致したことが逮捕の決め手となり、裁判では、2000年に無期懲役が確定。ところが2009年4月、遺留物の再鑑定によってDNA型が一致しないことが判明し、逮捕から18年近い歳月を経て菅家さんは釈放されました。
当時、再鑑定を行った着衣には精液斑は残っておらず(最初のDNA型鑑定などで全量消費した)、再鑑定を行っても結果は出ませんでした。
他の検査も併用すべきだったともいえますが、女児の下着は1年以上経って川の中で泥だらけの状態で発見されており、対象試料の保存状態の問題も一因でした。
他にも、1966年に一家4人が放火により死亡した「袴田事件」では、元被告人の袴田巌氏に捜査段階の自白で死刑判決が下りていました。袴田氏は判決の冤罪を訴え、DNA型鑑定で再審となりましたが、今も審理中です。
DNA型鑑定が事件の争点となって争われたのが「東電OL殺害事件」です。1997年、都内アパートで39歳の女性が遺体で見つかり、ネパール人男性を逮捕、無期懲役となったのですが、DNA型鑑定で無罪が確定、ネパールに帰国しました。
出典:『図解 科学捜査』監修/山崎昭
【書誌情報】
『図解 科学捜査』
監修:山崎昭
科学捜査は驚くほど進化している。血液や指紋・DNA鑑定、顔認証システム等の画像解析やインターネットを駆使した情報分析など、微細な証拠から犯行の立証、犯人逮捕に結びつけている。刑事ドラマや推理小説などで活躍する科学捜査の実体、その最先端の技術、方法など全貌を図解で徹底紹介!微細な証拠も大いに真実を語る、犯罪は絶対に見逃さない。
公開日:2021.09.19
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