血痕で推測できる犯行の真実
現場の血痕が人の血液だとわかったら、被疑者を絞り込むために、血液型判定を行う場合があります。血液型の分け方は、赤血球膜に含まれる抗原の型で4種類に分ける「ABO式」がよく知られています。それ以外にも、血清タンパク型、赤血球酵素型、唾液タンパク型など無数の型があります。
犯罪捜査における血液型検査では、まずABO式検査を行い、次にRh式(2種)、Rh-(マイナス)Hr式(18種)、MN式(9種)、P式(2種)などと細分化された血液型も調べ、ABO式だけでは個人を識別できなくても、これらを併用し、確率的には数千人にひとりまで絞り込むことができます。
ただ実際には、試料が古かったり、量が少なかったりすると、ABO式血液型しかわからない場合が多く、個人識別が可能なレベルまで検査できることは少ないのです。
そこで、古い少量の血痕からでも、血球細胞を使って個人識別が可能なDNA型鑑定が有効になってきます。また、血痕鑑定は、被疑者や被害者から採取された血液や、死体の心臓に残っている血液なども鑑定の対象となります。
さらに、血痕以外にも被害者の着衣には、唾液、尿、汗などの人に由来する液状成分(体液)が残されることがあります。これらの多くは乾燥し、「体液斑痕」と呼ばれるシミになっています。
体液斑痕も血痕と同様に、含有する酵素などとの化学反応を利用して判定できますが、あわせて血液型鑑定やDNA型鑑定を行うことができます。 性犯罪などは精液の鑑定が行われ、唾液は、タバコの吸い殻、切手、封筒、食べ物をかじった跡、体についた噛かみ跡などからも採取し鑑定します。
出典:『図解 科学捜査』監修/山崎昭
【書誌情報】
『図解 科学捜査』
監修:山崎昭
科学捜査は驚くほど進化している。血液や指紋・DNA鑑定、顔認証システム等の画像解析やインターネットを駆使した情報分析など、微細な証拠から犯行の立証、犯人逮捕に結びつけている。刑事ドラマや推理小説などで活躍する科学捜査の実体、その最先端の技術、方法など全貌を図解で徹底紹介!微細な証拠も大いに真実を語る、犯罪は絶対に見逃さない。
公開日:2021.09.28