髪の形や太さ、色調で犯人を絞る
犯行現場にはかなりの確率で犯人の毛髪が残っています。指紋や血痕に用心しても、知らずに抜け落ちる毛髪までは、さすがに犯人も気が回らないのでしょう。
肉眼では細くて黒い糸のようにしか見えない毛髪ですが、現場と被疑者、被疑者と被害者の直接的な接触を物語る他、犯人の生活ぶりや肉体的な特徴、犯行現場の状況などを教えてくれる重要な証拠です。
毛髪は表面の「キューティクル」といわれる小皮層、メラニン色素を含み大部分を占める中間の皮質層、中心部分の髄質の3層からなります。髄質は空気を含んだスポンジのようになっています。
まず、毛であることがはっきりすれば、毛髪人獣鑑定で、人毛かどうかを判別し、形態学的検査、血液型検査、薬物検査などを実施して、総合的に識別していきます。
「形態学的検査」では、毛の太さや色調、髄質や毛根の形などの個人が持っている特徴や、毛先の形、小皮表面の傷いたみ具合、パーマや染毛の有無など、生活状況を反映するような特徴を明らかにします。
また、どの部位の毛か、抜去毛か脱落毛か、死後に抜けたのかそうでないのか、なども検査します。血液型検査は、3.4㎝程度の長さの毛髪を洗浄後、砕いて毛髪内部の組織を露わにし、3種類の試験管に分け入れ、抗A、抗B、抗Hの血清を入れ、その凝集反応で判定します。
抜去毛のように、根元(毛根鞘)に根鞘細胞がついていれば、DNA型鑑定を行うことができ、個人識別が可能です。
出典:『図解 科学捜査』監修/山崎昭
【書誌情報】
『図解 科学捜査』
監修:山崎昭
科学捜査は驚くほど進化している。血液や指紋・DNA鑑定、顔認証システム等の画像解析やインターネットを駆使した情報分析など、微細な証拠から犯行の立証、犯人逮捕に結びつけている。刑事ドラマや推理小説などで活躍する科学捜査の実体、その最先端の技術、方法など全貌を図解で徹底紹介!微細な証拠も大いに真実を語る、犯罪は絶対に見逃さない。
公開日:2021.09.29