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多くの人の行動を変えたい時に簡単に誘導できる「ナッジ理論」とは?【経済の話】

Text:神樹兵輔

行動経済学で注目の「ナッジ理論」

2017年にノーベル経済学賞を受賞し、注目を集めたのが、シカゴ大学の行動経済学者リチャード・セイラー教授の「ナッジ理論」でした。ナッジとは、「軽く肘で突く」といった意味です。

人の意思決定は、規制や罰則などで動かすよりも、「ナッジ理論」で簡単に誘導できることを証明して見せたのが、セイラー教授の実証研究でした。行動経済学は、ヒューリスティックやバイアスによる認知への影響が重視されますが、「ナッジ理論」は、まったく人に意識されないうちに、行動を変えさせてしまうところに特徴があります。

たとえば、寿司屋の握りメニューが、松が2000円、竹が1500円、梅が1000円だと、真ん中の1500円の竹が一番売れることは、よく知られています。松はちょっと贅沢で、期待外れだったら嫌なので敬遠され、梅はチープすぎる気がして、真ん中の竹を選ぶのです。これが、ナッジ理論によるフレーミング効果です。

オランダ・アムステルダムのスキポール空港の小便器では、内側にハエの絵を描いたことで、清掃費が8割も削減できました。人は的があるとそこに命中させたくなるという心理を応用した例です。ナッジ理論には、選択の構造的仕掛けが働いているのです。

英国の運転免許証申請時には、「臓器提供者になるか?ならないか?」という選択肢の時はイエスが少なかったのです。しかし、臓器提供者になることを前提として、ノーと答えた場合に限り「臓器提供者にならない」ことにしたら、臓器提供者が激増する結果になっています。

多くの人の行動を変えたい時には、メリットを説かずともナッジ理論を応用し、思考の枠組み(フレーム)を少しだけ変えてやればよいわけです。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』
監修:神樹兵輔

日本の社会をとりまく環境は日々変化を続け、日本経済を知ることはイコール「世界や社会の今」を見ることにもなる。行動経済学から、原価のしくみ、生活に密着した経済の疑問や問題点など、いま知っておきたい経済の基本を、身近なテーマとともに図とイラストでわかるやすく解説、読み解く一冊。