化粧品の原価はとても安いけれど
2017年の化粧品業界の市場規模は約2兆5千億円。このうち、資生堂、花王、コーセー、ポーラ・オルビスの大手4社がシェアの7割を押え、残りを中小・零細の千数百社が奪い合う構図です。化粧品の原価が激安なのは業界のマル秘常識です。基礎化粧品の原料は水と油だからです。
水と油を混ぜ合わせる合成界面活性剤の他に、色素、香料、防腐剤が入り、さらに特殊成分がちょっぴり入ります。高価といわれるヒアルロン酸はたった1g(1㏄)で4Lもの保水効果があるため、化粧品の容量全体の1.2%含まれるかどうかです。
1g50円程度のヒアルロン酸をわずか0.1㏄入れれば湿潤効果満点となり、原料費は5円ですみます。千円で売られる化粧品の内容物が10円程度の原料費でも、容器代や箱代のほうが高いのです。
こちらに50円~100円もかかります。化粧品は内容物よりも容器代や箱代が高い不思議な商品なのです。メイクアップ製品も同様に原価激安なので参入メーカーは後を絶ちません。
化粧品メーカーはメーカーといってもファブレス化(外部メーカーに製造委託する)がすすんでいます。外注で(原材料製造・乳化・香料・練り加工・容器・パッケージ製造)作ってくれるメーカーが7千社余りもひしめいているからです。
ところで化粧品業界への参入は容易でも競争は熾烈です。既に大手が広大な販売網を築き上げているからです。業態は、制度品メーカー、訪販メーカー、通販メーカー、一般品メーカー、百均専業メーカーなどがあるものの商品の知名度を上げるには莫大な広告費や販促費がかかります。生き残るのは至難です。ただし、化粧品は夢を売るものゆえに高価格品ほど効果があると錯覚してくれます。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』
監修:神樹兵輔
日本の社会をとりまく環境は日々変化を続け、日本経済を知ることはイコール「世界や社会の今」を見ることにもなる。行動経済学から、原価のしくみ、生活に密着した経済の疑問や問題点など、いま知っておきたい経済の基本を、身近なテーマとともに図とイラストでわかるやすく解説、読み解く一冊。
公開日:2021.04.08