市場規模が膨らんでも利幅縮小の葬儀業
2017年の死亡者数は134万人。出生数は94万人なので、人口の自然減は約40万人です。 死亡者数は今後年々増え続け、人口減少に拍車をかけます。当然ながら、死亡者数が増えれば、葬儀件数も伸び、葬祭業者は儲かるはずでした。
しかし、死亡者の高齢化(葬儀需要減少)とデフレの深化により、葬儀一件当たりの単価は減少しています。市場規模は年々増えて昨年2兆円を超えたと推計されますが、葬儀の平均単価は、2006年頃の200万円強から、現在は130万円程度に縮小しています。
この業界は、花輪、祭壇、鯨幕、受付セット、霊柩車、各種飾り具などは、劣化しても修復して何度も使い回しが利きます。そのうえ、仕上がった祭壇が見劣りすると、遺族の虚栄心が刺激され、追加費用で単価を吊り上げるなどオイシイ商売もできました。実際、営業利益率が非常に高い業界なのです。
150万円の葬儀代の原価内訳を見ると、棺桶は安い合板製(7千円)、火葬が都内なら実費5万円(地方だと1万円程度)、ドライアイスが2〜3千円、霊柩車のガソリン代1千円、飾り具が2千円、仏衣が8百円、骨箱5百円、花輪は8百円の使い回しで、原価率は10%以内に楽々収まるのです。
この他に、場合によっては遺体を斡旋してくれた病院への謝礼の20〜30万円を加えても(あくまでも一部の病院の例です)、粗利は7割近くありました。社員の給与水準も高く、かつては600万円台だったのに年々減少しています。
つまり、最近は様相も一変したのです。葬儀規模は縮小し、社葬など大規模葬儀がないと儲けが薄いのです。家族葬では激安20万円セットまで登場しました。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』
監修:神樹兵輔
日本の社会をとりまく環境は日々変化を続け、日本経済を知ることはイコール「世界や社会の今」を見ることにもなる。行動経済学から、原価のしくみ、生活に密着した経済の疑問や問題点など、いま知っておきたい経済の基本を、身近なテーマとともに図とイラストでわかるやすく解説、読み解く一冊。
公開日:2021.04.15