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千利休の茶室はなぜ四畳半の空間なのか?【建築の話】

4枚半の畳で宇宙をつくる

お茶を飲むという行為は、葉のエキスと湧き水を体内に入れる、いわば「自然を飲む」ことだといえます。そのための空間である茶室が、山里にある簡素な庵を意識してつくられたのも当然だといえるでしょう。

茅葺きや板葺きの屋根をつかい、茶室に向かう露地に飛び石、湧き水をイメージした蹲踞(背の低い手水鉢)を置くのも、すべて山里のイメージです。庵の広さは方丈、つまり1丈(10尺=約3m)四方です。畳を敷くとほぼ4畳半になります。千利休登場以前にはもっと広い茶室もあり、茶道具や名物(格の高い道具)を飾ることがよくありました。

ところが4畳半は人の距離が緊密になり、ムダな飾り物を置くスペースはうまれません。お茶を点てて客人に振る舞う点前に集中できる広さなのです。これが、千利休が目指した侘茶でした。

茶室の4畳半には、光の工夫も施されています。両開きの大きな障子戸から入る光は、室内全体を均一な明るさに照らしますが、山里にある庵は薄暗いものです。そこで2枚引の障子戸をやめ、60センチ四方の板戸のにじり口にして、光をさえぎりました。窓は土壁に小さく開け、光がスポットライトのように差し込むようにしたのです。

室内には明所と暗所のコントラストがうまれ、床の間を照らしたり、手元を明るくしたりといった舞台のような演出が可能になっています。

利休の時代、茶人の中心は都に住む町衆たちでした。茶道は、都市にいながらにして、山里の空間を楽しむことでもあったのです。4畳半の茶室はそのためにつくられた「市中の山居」だといえるでしょう。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』著/スタジオワーク

【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク

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