~生物の陸上進出~
オゾン層による紫外線カットが生物の陸上進出を促しました。最初に陸に上がったのは、緑藻類から進化したコケ類、シダ類です。4億5000年前頃のことです。どちらも原始的な構造を現在に伝える植物で、種子ではなく胞子で繁殖します。
シダ類は陸上生活に適応するために、維管束を作り上げました。維管束とは、水やミネラル、光合成によって作られた有機物を植物全体に輸送する、いわばパイプです。また、根・茎・葉というそれぞれ役割の異なる器官も持ちました。これらの特徴はその後現れる種子植物にも引き継がれていきます。
それまでの陸上は殺伐として岩だらけの場所でしたが、シダ類の繁栄により、陸に緑がもたらされました。さらに、枯れた茎などのセルロースは、次の世代への養分となり、細菌類の繁殖にも寄与しました。
植物から少し遅れて、昆虫類も陸上に進出しました。昆虫は気門という呼吸穴を体中にめぐらせているという特性から、陸上で酸素を取り入れることにいち早く対応できたのです。
脊椎動物の上陸は、淡水魚類に端を発します。河川は海中と比較して浅く、障害物も多くありました。場合によっては、泳ぐよりも這ったほうが移動しやすかったため、ひれを足のように発達させる必要がありました。彼らは皮膚、呼吸方法も陸での生活に適応させていきます。こうして3億5000年前頃両生類が誕生し、陸へと進出していきました。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。
「人間は何歳まで生きられる?」「iPS細胞で薄毛を救う?」「三毛猫はなぜメスばかり?」「黒い花は世に存在しない?」ーー生命の誕生・進化から、動物、植物、ヒトの生態、最先端の医療・地球環境、未来まで、生物学でひもとく60のナゾとフシギ!知れば知るほど面白い!
公開日:2023.05.05
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