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人間はなぜ体毛を失ったの?【生物の話】

Text:廣澤瑞子

~人類の進化~

哺乳類を指す「けだもの」の語源は「毛のもの」。毛があることは哺乳類の大きな特徴です。体毛の役割は、体温の保持と体表の保護にあると考えられています。クジラなどの水生動物は水中での遊泳にとっての抵抗を少なくするために、また気温の高い地域に住む大型のサイやゾウなどは、体温が上がりすぎるリスクを回避するために、毛皮を持ちません。では、ヒトにはなぜ体毛がないのでしょうか。

かつては、ダーウィンの提唱した性淘汰説が有力視されていました。ヒトの体毛が退化したのは、異性の好みにあわせようとした結果というものです。体毛の薄い男女が繁殖をする確率が高くなり、体毛が薄い方向へと淘汰されていったというのです。

しかし、近年では、二足歩行に獲得によるライフスタイルの激変によって、ヒトは体毛を失ったとの説が有力です。ホモ属が出現する以前、ヒトの祖先となる猿人アウストラロピテクスは体毛をまとっていました。しかし、森から草原へと進出し、だんだんと移動距離が伸びていくと、体温を上昇させる体毛はかえって邪魔になり、大型化した脳は熱に弱く、体温の上昇を特に嫌いました。

こうしたことから、しだいにヒトは体毛を失い、160万年前、ホモ属初期時代にはすでに体毛がなかったのではないかと言われます。体毛を失ったことによって、毛を逆立てて怒りを表現するようなことができなくなったことは、豊かな表情やジェスチャーによるコミュニケーションの発達に一役かったとも言われています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。


「人間は何歳まで生きられる?」「iPS細胞で薄毛を救う?」「三毛猫はなぜメスばかり?」「黒い花は世に存在しない?」ーー生命の誕生・進化から、動物、植物、ヒトの生態、最先端の医療・地球環境、未来まで、生物学でひもとく60のナゾとフシギ!知れば知るほど面白い!

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