影響 ローマから全世界に広がった信仰の熱
イエスの活動をユダヤ教の異端、あるいは民衆扇動だと考えていたユダヤ教の指導者やローマ帝国の政治家は、イエスを死刑に処すれば、その活動は消滅するものと考えていました。
しかし、そうではありませんでした。
イエスの教えを受けた者たちはひそかに布教を続けていたのです。教えは人から人へと伝えられ、少しずつ、しかし確実に広まっていきました。
こうしたキリスト教初期の布教活動でとくに重要な働きをしたのがペトロとパウロです。
ペトロはイエスが最も信頼をおいた12人の弟子(十二使徒)の中でも指導的な立場にあった者で、イエスが昇天した後は、まだ信者の小さな集まりにすぎなかった各地の教会をめぐって教団の基礎を固めました。
一方、パウロは最初、キリスト教を弾圧する側の人間でしたが、イエスの啓示を受けて熱心なキリスト教徒となりました。パウロはローマ帝国の市民権をもっていたこともあって、小アジアやギリシアへ3度に渡る布教の旅をしています。
こうした活動によりローマ帝国内にも信者は増え、3世紀前半にはローマ市内に数千人の信者がいたといわれます。こうした事態にローマ帝国は徹底した弾圧で対処しようとしましたが、それでは信徒を減らすことはできないとわかり、313年に信仰を公認することとしました。さらに392年にはキリスト教を国教とするまでに至りました。
これ以降は急速に世界に広まっていきました。5世紀末にはフランク国王が信徒となり、ここからヨーロッパ全土に浸透しました。16世紀には宣教師がアジア各地に福音を伝え、日本にも教会が建てられました。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 聖書』
著者:渋谷伸博 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1960年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。宗教史研究家。よみうりカルチャーなどで神話をテーマとした講座も開講している。著書多数。近著に『一生に一度は参拝したい全国の神社めぐり』『聖地鉄道めぐり』『神々だけに許された地 秘境神社めぐり』『歴史さんぽ東京の神社・お寺めぐり』(いずれもジー・ビー)、『あなたの知らない般若心経』(宮坂宥洪監修、洋泉社新書)、『諸国神社 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)などがある。
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公開日:2022.06.30