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16.単なる神話で片付かない古代国家の誕生【世界史】

Text:鈴木 旭

縄文日本から弥生日本への過渡期に出現する国家創成期の伝承。

『日本書紀』によると、神武天皇は庚午年1月1日に生まれ、15歳で立太子。45歳のとき、志を立てて東征を開始し、肥前から宇佐、安芸、吉備を平定して難波、河内に攻め入り、紀伊に回って数々の苦難を経て大和を征服。ついに畝傍山(うねびやまの)麓、橿原(かしはら)の地に都を開いたという。

そして、翌年の前660年2月11日、初代天皇として即位したと伝えられている。もっとも即位の日は明治政府が『日本書紀』に記述された時日を太陽暦に換算して導き出した数字であり、そのまま史実とするわけにはいかない。

しかし、この伝承を「神話」として一蹴するのも適当ではない。

第一の理由は、前660年という年は考古学年代でいう縄文晩期(前1,000年~前350年)に相当するからだ。前期以来、選択的農業を開始して定住生活を体験。集落を営むようになって後期には大規模集落を形成するに至った。

第二は、晩期になって気温が低下し、周辺海域の海面低下によって選択的農業と漁労は壊滅的打撃を受けたところへ稲作と鉄器が普及。組織だった生産労働が求められるようになった。

さらに第三には、ちょうど同時期、中国大陸では春秋戦国時代の真只中にあった。諸勢力間の興亡激しく、敗残者の群れが大挙渡来し、勝手に上陸してキャンプ地を開き、居座ることがなかったとは言えないご時世だった。

こうなると、稲作集落を基盤にして鉄器を集め、武装集団を率いて列島防衛、国家創生のために立ち上がる勢力がなかったとは言えない。空想かもしれないが、十分に予想できる。神武天皇は、その象徴的人格だったのではあるまいか

 

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
昭和22年6月、山形県天童市に生を受ける。法政大学第一文学部中退。地理学、史学専攻。高校が電子工業高校だったためか、理工系的発想で史学を論じる。手始めに佐治芳彦氏と共に「超古代文化論」で縄文文化論を再構成し、独自のピラミッド研究から環太平洋学会に所属して黒又山(秋田県)の総合調査を実施する。以後、環太平洋諸国諸地域を踏査。G・ハンコック氏と共に与那国島(沖縄県)の海底遺跡調査。新発見で話題となる。本業の歴史ノンフイクション作家として、「歴史群像」(学研)創刊に携わって以来、「歴史読本」(新人物往来社)、「歴史街道」(PHP)、「歴史法廷」(世界文化社)、「歴史eye」(日本文芸社)で精力的に執筆、活躍し、『うつけ信長』で「第1回歴史群像大賞」を受賞。「面白いほどよくわかる」シリーズ『日本史』『世界史』『戦国史』『古代日本史』はロングセラーとなる(すべて日本文芸社)。他に『明治維新とは何だったのか?』(日本時事評論社)、『本間光丘』(ダイヤモンド社)など著書多数。歴史コメンテーターとして各種テレビ番組にも出演。幅広い知識と広い視野に立った史論が度々話題となる。NPO法人八潮ハーモニー理事長として地域文化活動でも活躍中。行動する歴史作家である。

いま地球規模の「人類史」という観点からも注目され、一方で一般教養、知識としても人気が高い「世界史」。世界規模の歴史を学ぶ上で大切なのは、歴史を流れとして捉えること、歴史にも原因と結果があり「なぜ」そこに至ることになったのか大もとの理由を理解すること、そして見ただけで忘れないようにビジュアルで視覚的覚えること。本書ではさらにアジアや日本の歴史とその役割にも重点を置き、最新の発見や新しい史論を取り入れた、世界史の学び直しにも、入門にも最適な知的好奇心を満足させる1冊。

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