急伸長したイスラム世界
非アラブ人の世界にイスラム改宗者(マワーリー)が生まれ、広がるにつれて諸民族間の風習や生活上のルールの違いから対立したり、不満を爆発させるようになる。そして、ウマイヤ朝そのものを打倒しようとする動きまで表れる。
預言者ムハンマドの叔父の家系に当たるアブー・アルアッバースは「イスラム共同体の指導者にはムハンマド家の出身者が相ふさわ応しい」という思想を利用し、マワーリーやシーア派の反ウマイア勢力の後押しを得て東部イランで蜂起。七五〇年、アッバース朝を樹立した後、翌年、ウマイヤ朝を滅ぼしてイスラム世界の覇者となる。
しかし、ウマイヤ朝のカリフ一族もしぶとく、イベリア半島に脱出し、コルルドバを首都とする後ウマイア朝を設立する。勢力範囲はわずかにイベリア半島に限られているが、イスラム共同体は東西に分裂したことになる。新興アッバース朝はシーア派を抑えて第二代カリフにマンスールを選出。その時、バグダードに壮大な円形の新首都を築いて、唐帝国の首都長安と並ぶ、世界最大の都として知られるようになり、空前の繁栄を享受するようになる。
この時代にイスラム法が整備され、非アラブ人への差別は解消。むしろ、アッバース朝誕生に貢献したイラン人が軍隊や官僚機構で重視され、首都もバグダードになったのでアラブ人単一支配を脱し、真のイスラム共同体が実現されたと言ってよいのかもしれない。
しかし、イラン、シリア、エジプトは総督のもとで独自の軍隊を持ち、独自の判断で動くようになる。当然、カリフの主権から離反し、内部から変質して行くようになる。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊
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公開日:2023.01.01