プロイセンのユンカーたちと鉄血首相が描く立憲君主国
一八四八年、フランス二月革命の影響を受けて召集されたフランクフルト国民議会は失敗に終わり、平和的なドイツ統一の夢は消えた。歴史の歯車は一八六一年に即位したプロイセン王ヴィルヘルム一世が翌年、ユンカー(地主貴族)出身のビスマルクを首相に任命したときに動き始める。ビスマルクは議会の反対を押し切って軍備拡張に着手。一八六四年、オーストリアと組んでデンマークと対戦し、シュレスウィッヒとホルシュタイン公国を獲得。ところが、この管理を巡って、オーストリアと戦う羽目になり、勝利したので、今度はドイツ連邦を解体。オーストリアを排除して北ドイツ連邦を組織する。
するとドイツ統一の急速な進展に脅威を感じたのか、ナポレオン三世は、フランスに隣接する西南ドイツに干渉するので、ビスマルクは応戦する。一八七〇年、戦端は切って落とされ、あっと言う間にセダンでナポレオン三世を降伏させる。
この戦いで、ドイツは西南ドイツを守っただけではない。鉄鉱石資源の宝庫、アルザスとロレーヌ両州を奪取し、賠償金五十億フランを獲得した他、敵国フランスの首都パリに入城。ヴェルサイユ宮殿にてヴィルヘルム一世のドイツ皇帝就任式を挙行し、あろうことか、いき高らかにドイツ帝国の成立を宣言するのである。
言うまでもないが、ビスマルクもまた、この日以来、二十年間、ドイツ帝国宰相として辣腕を奮うことになる。総じて、この時代を俗に「ビスマルク時代」というが、外見上は立憲君主国であり、君主政体を象かたどっているものの、ビスマルク独裁の政体運営であったということである。ドイツ建国の父と言ってよい。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊
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公開日:2023.01.30