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28.空前の世界帝国として君臨する大唐国の出現【世界史】

Text:鈴木 旭

中国の皇帝であると同時に北方民族の天可汗になった太宗李世民。

李世民(りせいみん)(太宗)(たいそう)は、隋末の混乱期、父李淵(りえん)(高祖)と共に太原で挙兵し、長安を都と定めて唐王朝を創建。各地を転戦して割拠する群雄を平定した後、626年、最終的なライバル、兄の李建成(りけんせい)を倒し、二代皇帝に即位する。

注目されるのは、その際、倒した兄建成の幕下から登用した者に衆人環視の前で諫言(かんげん)を行わせ、常に自らを律するようにした点。そして、賦役、刑罰を軽減し、三省六部制の厳格な実施を行ない、軍事面でも兵の訓練を視察し、表彰制度を実施したため、唐の国勢は急速に高まった。

629年には念願の突厥討伐を実施。突厥の首長頡利可汗(いりぐかがん)を捕虜とし、支配下に治めたとき、族長たちは長安に集結し、太宗に北方民族の首長である可汗よりも上位の君主を意味する天可汗(てんかかん)を奏上する。中国皇帝であると同時に北方民族の首長としての地位も兼ねることになったのである。

さらに西域交易のターミナルである高昌国(こうしょうこく)を倒し直轄国としたため、国際的な交通ルートが開けた他、645年、インドから大量の佛典を持ち帰った玄奘法師を厚遇し、漢訳を行なわせるなど、国際的な文化交流、経済活動にも力を注いだ。

これらを総じて「貞観(じょうがん)の治」と称し、後世でも「理想の政治が行なわれた時代」として語り伝えられるようになった。隋末唐初の国土荒廃、混乱から国土を回復させたばかりか、続く唐王朝発展の土台を築いたこと、北方異民族の脅威を取り除き、長期にわたって友好関係を保ったことなど、中国史上、有数の名君として讃えられる。

唐王朝の皇帝はすべての諸国諸民族の長であり、唐王朝は空前の規模を誇る世界帝国となって行くのである。大唐帝国の誕生である。

 

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
昭和22年6月、山形県天童市に生を受ける。法政大学第一文学部中退。地理学、史学専攻。高校が電子工業高校だったためか、理工系的発想で史学を論じる。手始めに佐治芳彦氏と共に「超古代文化論」で縄文文化論を再構成し、独自のピラミッド研究から環太平洋学会に所属して黒又山(秋田県)の総合調査を実施する。以後、環太平洋諸国諸地域を踏査。G・ハンコック氏と共に与那国島(沖縄県)の海底遺跡調査。新発見で話題となる。本業の歴史ノンフイクション作家として、「歴史群像」(学研)創刊に携わって以来、「歴史読本」(新人物往来社)、「歴史街道」(PHP)、「歴史法廷」(世界文化社)、「歴史eye」(日本文芸社)で精力的に執筆、活躍し、『うつけ信長』で「第1回歴史群像大賞」を受賞。「面白いほどよくわかる」シリーズ『日本史』『世界史』『戦国史』『古代日本史』はロングセラーとなる(すべて日本文芸社)。他に『明治維新とは何だったのか?』(日本時事評論社)、『本間光丘』(ダイヤモンド社)など著書多数。歴史コメンテーターとして各種テレビ番組にも出演。幅広い知識と広い視野に立った史論が度々話題となる。NPO法人八潮ハーモニー理事長として地域文化活動でも活躍中。行動する歴史作家である。

いま地球規模の「人類史」という観点からも注目され、一方で一般教養、知識としても人気が高い「世界史」。世界規模の歴史を学ぶ上で大切なのは、歴史を流れとして捉えること、歴史にも原因と結果があり「なぜ」そこに至ることになったのか大もとの理由を理解すること、そして見ただけで忘れないようにビジュアルで視覚的覚えること。本書ではさらにアジアや日本の歴史とその役割にも重点を置き、最新の発見や新しい史論を取り入れた、世界史の学び直しにも、入門にも最適な知的好奇心を満足させる1冊。