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常緑植物は冬でもなぜ緑のまま?冬の厳しい寒さの中でも常緑植物が青々とした葉を見せるワケとは?【図解 植物の話】

Text:稲垣栄洋

冬に向かって増える物質があるので、枯れない

冬の厳しい寒さの中で、枯れもせず落葉もしないで青々とした葉を見せる植物は常緑樹(常緑植物)です。常緑樹は昔から永遠の命の象徴とされてきました。たとえばシキミは仏前草ともよばれ、仏事や墓に供えられ、サカキは、神と人との境にある木「境木(さかき) 」として古来神前に供えられてきました。じつは常緑樹の葉を真夏に氷点下にさらすと、凍って枯れてしまいます。常緑樹は冬に向かって枯れない準備をしているから冬でも緑なのです。たとえば葉を凍らせないために、常緑樹は光合成によって、葉はふだんより多くの糖を合成します。水は0℃で凍り、細胞内の水分が凍結すると、固く鋭い氷の結晶が細胞内を傷つけ、壊してしまいます。しかし、糖が溶けた水分は氷になる温度が下がります。これを「凝固点降下」といいます。これで細胞の外に氷ができても中は生きていけます。

では、細胞の外に氷ができたら、植物全体は傷ついたり、死んだりしないのでしょうか。体内に氷ができることは異常事態ですから、植物は大きなストレスを受けます。しかし、細胞外の凍結が細胞内の凍結を防いでいることは確かで、細胞内の水分は氷に引き寄せられて細胞外に出ていきます。さらに、植物細胞を囲む細胞壁と細胞膜が氷に対するバリアとなって、氷が細胞内に侵入することを防いでいます。葉が糖などをせっせと作って冬に備えていることを利用して、温室栽培の野菜にわざと寒風を一定期間あてて苦しめると、うま味があってビタミン豊富な甘い冬野菜となります。これは凝固点効果をもたらした糖、アミノ酸、ビタミンが細胞内に増えるためです。この栽培法を「寒じめ栽培」といい、こうしてできた野菜を「寒じめ野菜」といいます。

植物細胞内の脱水メカニズムと細胞内の糖分増加『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』

『図解 植物の話』はこんな人におすすめ!

・光合成はなぜ必要なのか?
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色仕掛け、数学の応用など、植物のたくみな戦略を徹底解説!生き残りをかけたすごいサバイバル術やしくみを、わかりやすい図解とイラストで紹介しました。「花の女王はバラ、では雑草の女王は?」「なぜ夏の木陰はヒンヤリするのか?」「昆虫と植物は必ずギブ&テイクの関係なのか?」「植物は数学を知っている?」「じつは、植物によって光合成のしかたが違う?」など身近な疑問から、花粉を運ばせるための昆虫だましテクニック、一歩踏み込んだ光合成のしくみまでわかりやすく解説します!

シリーズ累計250万部を突破した「図解シリーズ」の読みやすさ

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ヒマワリが太陽の追っかけと呼ばれる理由とは

図解シリーズには、健康・実用だけではなく大人の学びなおしにピッタリな教養のテーマも満載。さくっと読めてしまうのに、しっかりとした専門家の知識を身につけることができるのが最大の魅力です!

気になる中身を少しだけご紹介!今こそ知りたい植物の奥深い世界!!

植物にも血液型があるってホント?

わたしたちの体を流れる血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンを調べると、分子が植物の葉緑素、クロロフィルとそっくりです。違うのは、真ん中にある元素がヘモグロビンは鉄、クロロフィルはマグネシウム、たったそれだけの差です。それなら植物には、人間と同じような血液型があるのでしょうか。じつは、血液型をもつ植物はけっこうあります。人間の血液中は血中の「糖たんぱく」の種類で決まります。1割くらいの植物は、人間と似た糖たんぱくをもっていることが知られています。植物の血液検査の結果、O型やAB型が多く、たとえばダイコンやキャベツはO型、ソバはAB型となるそうです。植物を切っても動物のように出血しませんが、動物と植物の基本的な生き方には似たところがあります。マメ科植物には、ヘモグロビンに似たクロロフィルのほかに、レグヘモグロビンがあります。名前からわかるように、レグヘモグロビンはヘモグロビンに似た働きをします。それは両者ともに酸素を運ぶ役割をしていることです。

では、レグヘモグロビンはいつ酸素を運ぶのか。まず、マメ科植物には根に丸い「根粒」とよばれるコブがたくさんあります。この中に「根粒菌」というバクテリアがいて、空気中から窒素をマメ科植物に供給します。代わりにマメ科植物は、根粒菌にすみかと栄養分提供しますから、マメ科植物と根粒菌は「共生」という互いに利益を得る関係です。しかし、根粒菌が窒素固定をするときにジレンマが生じます。根粒菌は窒素固定に必要なエネルギーを確保するために酸素呼吸をしますが、窒素固定に必要な酵素は、酸素があると活性を失うのです。そこで、マメ科植物はレグヘモグロビンを根粒菌に送って、素早く余分な酸素を運んで取り除きます。

ヘモグロビンとクロロフィルの違い

★葉っぱの形が植物によって違うのはなぜ?
★なぜ春先に花粉症になるのか
★植物はどうやってあちこちに子孫を増やすの?
★光合成をしない植物も存在する?

などなど気になるタイトルが目白押し!

今こそもっと知りたい「植物の世界」が丸わかり!

執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
稲垣 栄洋

色仕掛け、数学の応用など、生き残りをかけた植物のたくみな戦略を徹底解説!図とイラストで、ひとめで植物の生態としくみがわかります。読めば、「ふだん見かけるあの植物に、そんな秘密が!?」と驚くはず。監修は、植物学者・静岡大学教授の稲垣栄洋先生!植物たちの巧みな戦略とたくましい生き様が見える一冊です。

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