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郡県制で広大な国を均一に統治【始皇帝の話】

Text:渡邉義浩

地方分権を脱出して中央集権化へ歩み出した

始皇帝の行なった改革の中で、もっとも優れた功績とされるのが、中国を36の郡に分け、その下に県を置いた「郡県制」です。それまでは氏族制度で、各地域を諸侯たちが治める「封建制」をとっていました。

また、要職に誰が就(つ)くのかは、その地方の「氏族制ピラミッド」の力関係によって決まることが多く、この制度のもとで私腹を肥やした諸侯が反乱を起こすこともありました。

そこで始皇帝は、統一した中国国内を36の郡に分けて、それぞれの郡に行政責任者の“守(しゅ)”、軍事を管轄する“尉(い)”、軍事を監察する“監(かん)”という役職を置きました。

これらは始皇帝直属の役職で、中央から派遣された官僚が、お互いに監視し合って力の均衡を保たせる狙いがありました。

さらに、秦の王族や功績をあげた家臣には賞与を与えましたが、領地は召し上げました。

こうして、行政官たちに権力を持たせずに、すべての権力が始皇帝に集中する仕組みをつくり、広大な中国を治めようとしたのです。

その後、“州”や“道”といった行政区分が加わり、現在、中国は23の省、5つの自治区、4つの直轄市に分かれています。始皇帝の築いた中央集権体制は、現代まで引き継がれたのです。

中国の行政区分:1997年にイギリスから香港が返還され、1999年にポルトガルからマカオが返還された。特別行政区として省と同じように扱われている。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 始皇帝の話』
著者:渡邉義浩  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1962 年東京生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科修了。文学博士。現在、早稲田大学理事・文学学術院教授。大隈記念早稲田佐賀学園理事長。三国志学会事務局長。専門は古代中国思想史。主な著書・監修本に『眠れなくなるほど面白い 図解 三国志』(日本文芸社)、『始皇帝 中華統一の思想―「キングダム」で解く中国大陸の謎』(集英社新書)、『教養として学んでおきたい三国志』(マイナビ新書)などがある。


紀元前246年、13歳で即位し、史上初めて中国を統一して500年の争乱の歴史に終止符を打った秦の始皇帝。歴史に残るその戦いと数々の偉大な功績、また謎に満ちた生涯、始皇帝を支えた多くの忠臣を、最新研究をもとに図解、イラストを交えてわかりやすく解説する。人気マンガ『キングダム』でも脚光を浴びた「始皇帝」の人物像と中華統一や数々の偉業の謎と軌跡に迫る。

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