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8月8日 節の話「秋の七草」とは?|立秋【二十四節気 暦のレシピ】

Text:制作・文:猪飼牧子 撮影:清水美由紀

明日8月8日から二十四節気は立秋(りっしゅう)です。

太陽の光が照りつける昼間はうだるほどに暑く、夜になっても気温が下がらないこの時季、初秋とはなかなか思いがたいですが、暦の上では秋へと変わります。

薬用から建築まで 古代から人々の暮らしに役立ってきた秋の七草

古くから人々は身近な植物を暮らしに取り入れ、季節の変わり目の体の不調をいたわってきました。園芸だけでなく、薬用や食用、建築や工芸などにおいて役立つ植物を有用植物といいますが、秋の七草もその一つです。

秋の野に咲きたる花を指折(およびお)りかき数(かぞ)ふれば七種(ななくさ)の花

芽(はぎ)の花 乎花(おばな)葛花(くずばな)瞿麦(なでしこ)が花 姫部志(おみなえし)また藤袴(ふじばかま)朝貌(あさがお)が花

遣唐使に随行した山上憶良(やまのうえおくら)が詠み、「万葉集」に収められたこの二首が秋の七草の起こりといわれています。

芽の花は赤や白の蝶のような可憐な花を咲かせるハギ(萩)。乎花はススキ(芒、薄)、葛花は根が葛粉として薬用、食用に されるクズ。瞿麦はナデシコ(撫子)、姫部志はオミナエシ(女郎花)、藤袴はフジバカマです。朝貌については諸説ありますが、現在はキキョウ(桔梗)の説が有力です。ひっそりと野に咲く姿は控えめですが、どの花も優秀な有用植物です。

「万葉集」では秋の七草以外にも数多くの植物が登場します。そのほとんどが有用植物。当時は見た目の美しさというよりも、いかに暮らしに役立つかという視点が重要であったことがうかがえます。そのつつましい姿からは容易に想像できない力を持ち合わせている秋の七草は、解毒や胃腸薬、染め物や茅葺(かやぶ)き屋根の材料などに用いられ、人々の暮らしに寄り添ってきました。

花屋敷として江戸時代に造られた東京都墨田区の向島百花園をご存じでしょうか。創始者の佐原鞠塢(さはらきくう)は 「群芳暦(ぐんぽうれき)」 という四季の植物目録を編集しました。これは六千種もの植物を二十四節気ごとに分類した花暦。百花園の植物はこの書を元にして植栽されたといわれています。特に秋の七草を好んだ鞠塢。百花園の名となる前は秋芳園と呼んでいたほどで、江戸時代の開園当初、名物は秋の七草と梅樹だったそう。今も名物となっている全長30メートルもあるハギのトンネルは、この時季になると多くの人で賑わいます。

 

江戸は園芸文化が大きく花開いた時代。この園にはありのままの当時の風情が再現されており、歴史や文化を感じながら植物と触れ合う楽しさがあります。

【書誌情報】
『二十四節気 暦のレシピ』
猪飼牧子・清水美由紀 著

書籍『二十四節気 暦のレシピ』

古くから季節を表す言葉「二十四節気 七十二候」をテーマに、季節の移り変わりを花や植物で感じながら、ものづくりの楽しみを提案。小さな変化を繰り返しながら、季節とともに四季をたどっていく植物。その時季の植物をアレンジメントや料理やおやつに生かしたり、心と体を健やかするハーブやアロマを活用したり、ちょっとしたおもてなしの小物をつくったり。二十四節気を植物とものづくりで体感できるアイデアとレシピ120を紹介します。

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