体と心の負担にならない程度の運動で十分
運動習慣のある人は、うつ病の発症リスクが低いことがわかっています。たしかにふさぎがちなスポーツ選手や、うつ病のアスリートの姿はちょっと想像できません。私のクリニックを受診する患者さんを見ても、いかにもスポーツをしているような体型の方はまれで、とても痩せているか、ふくよかな方が多いように感じます。
うつ病に関する運動療法の著名な研究者であるジェームズ・A・ブルメンタールによれば「16週間運動療法を受けたうつ病の患者は、抗うつ薬を服用した患者のグループと同等の治療効果がある」としています。これは定期的に体を動かすことが、うつの症状にも一定の効果をもたらすことを示しています。
ここでいう運動とは、本格的な筋力トレーニングやランニングなどではありません。仕事や家事といった、忙しい日常の合間にできる簡単なもので十分です。一例を出せばラジオ体操などの誰もができる軽い運動でも、うつ病の発症リスクを軽減できます。
運動の強度や量ではなく、大切なのは例え1日数分でも、毎日または定期的に続けること。運動が生活のひとコマとして定着するよう習慣づけたいものです。体を動かす心地よさを実感できるようになれば、自然とストレスのたまりにくい精神状態にもなります。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 ストレスの話』
【書誌情報】
『図解 ストレスの話』
監修:ゆうきゆう
「ストレス社会」といわれている現在、科学や技術の発達で快適になっていく日々の生活とはうらはらに、ストレスからくる心身の不調に多くの人が悩まされています。ストレスの原因は仕事や学校、家庭、SNSなど人によってさまざま。特に最近では、新型コロナウイルスの影響でこれまでの生活様式が大きく変化し、何かと行動も制限されました。それにより、たまったストレスをうまく発散できずに常にイライラしたり、不安感がいつまでたってもぬぐえずあまり眠れなくなったり…また、ストレスは自律神経を乱す原因になるため、放置すると免疫力も下がり、体の不調を招くことになります。本書では、そんな諸悪の根源であるストレスの解消法を医師が解説。そもそも自律神経が乱れるまでストレスをため込まない男女別の考え方と、たまってしまったらすぐに自宅で解消できる方法を、メンタルマネジメントや栄養、運動など実用的な内容で紹介しています。
公開日:2022.08.15