植物ではないが、植物と関係が深い
キノコはコケやシダのように胞子(キノコの生殖細胞)で増えますが、植物ではなく菌類というものです。
生物全体は3つの「界」に分けられます。「植物界」「動物界」「菌界」です。菌類はこの菌界に属する生物です。
菌類といっても大腸菌のような細菌とは異なります。ちなみに細菌は細胞に核のない「原核生物」で酵母菌やキノコは核のある「真核生物」です。
自然界では、キノコはマツの木の根元や倒木などに生えています。その前は、地中でカビと区別がつかない糸のような菌糸として成長しています。
地下から地上に出た、子実体(しじつたい)とよばれるものが普段目にするキノコです。子実体は、植物でいえば種子を作る花に相当し、かさの裏から胞子を散布します。
キノコの生活はこれで終わりではありません。植物の根には、さまざまな菌がいて、菌類であるキノコも菌として木や根について植物と栄養分のやりとりをしています。さらに樹木が倒れるとそれを分解して土に返します。これは木材の化学成分にはキノコにしか分解できない物質が含まれているからです。
キノコは大きく2つに分けられます。おなじみのシイタケ、ナメコ、エノキタケ、ブナシメジなどの「腐生性キノコ類」は、死んだ植物を栄養源としています。あまり見ることのないマツタケ、ホンシメジ、トリュフなどの「菌根性キノコ類」は、生きた植物にとりついて成長します。
腐生性キノコ類は人工栽培でき、菌根性キノコ類は人工栽培ができないか、難しいキノコ(マツタケなど)です。いずれにせよ、キノコと植物は切っても切れない関係にあります。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。
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公開日:2023.04.10