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なぜ種なしフルーツがあるのか?種無しフルーツが出来たワケとは?【植物の話】

Text:稲垣栄洋

突然変異で生まれたバナナは、3倍体なので種子を作らない

バナナは熱帯アジアが原産地です。そこで育つバナナには、最初は実の中に種子がぎっしり詰まっていましたが、あるとき突然変異が起きて、種なしバナナができました。しかし、種子がありませんから種から増やすことはできません。そこでタケのように「株分け」して増やします。

突然変異でできた種なしバナナは、どうして種子ができないのでしょうか。同じ生物のオス・メスが交尾すると、オスの精子とメスの卵子がくっついて受精卵となります。受精卵はオス親の染色体の半数とメス親の染色体の半数をもっています。

たとえば、ヒトの染色体は46本ですから、受精卵は父親から23本、母親から23本、合計46本の染色体を受け継ぎます。子孫ができる生物の染色体は、すべて半分に分けることができます。その半数分を1セットとすると、たいていの生物は、2セットの染色体をもちます。これを「2倍体」といいます。

突然変異が起きると、染色体の半数分が合計3セット、つまり「3倍体」になることがあります。受精の際に、これをちょうど半分に分けることは不可能です。種子のできないバナナは3倍体なのです。

ところで、4倍体の植物ができたらどうなるでしょうか。

2倍体植物と突然変異の4倍体植物が交配すると、2倍体植物の卵子・精子(染色体1セットずつ)と4倍体植物の精子・卵子(染色体2セットずつ)とが融合し、1+2=3倍体となります。

3倍体の植物は、成長には支障がないので、体は正常につくられ、外見はほかの2倍体の植物と同じです。ところが3倍体では、前述のように正常な種子ができません。これが種なしバナナやスイカのでき方だったのです。

バナナの2倍体と3倍体とは!?

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。


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