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オジギソウはなぜおじぎをする?【植物の話】

Text:稲垣栄洋

葉の付け根にある細胞壁の膨圧が下がっておじぎする

植物の運動は非常に緩慢で、その動きを目の前で見ることはできません。例外はオジギソウの葉のおじぎ運動とハエトリグサの捕虫運動などです。

オジギソウの葉は、人や動物が触れたり、雨や風、振動など、外部からの物理的な刺激が加わると、素早く葉を閉じ、葉枕「ようちん(葉柄の付け根の部分)」が収縮して葉全体が垂れ下がります。数秒間という、植物としては例外的なスピードです。

葉が閉じるのは、刺激があると、葉枕の下側の細胞壁の膨圧(ぼうあつ)が小さくなって、葉全体を支えきれなくなり、おじぎ状態になるメカニズムが働くからです。膨圧というのは、細胞内の水分によって膨らんでいる細胞が細胞壁を押している圧力のことです。

オジギソウの葉枕を構成する細胞は運動細胞とよばれ、上側の細胞壁は下側より厚いので、おじぎの原因は下側の細胞壁の変化だけが関係しています。葉枕下側の細胞壁にかかっていた膨圧が下がって細胞から水分が出ていきます。すると細胞壁は張りを失い、葉の重みに耐えられなくなり、おじぎとよばれる下垂が起きることになります。動物に食べられないためともいわれていますが、はっきりした理由はわかりません。

動物が筋肉を動かすメカニズムはアクチンなどのたんぱく質がかかわっています。神経からの電気信号でアクチンなどの位置が変化して筋肉細胞が収縮するのですが、オジギソウでもいろいろな刺激がカリウムイオンによる活動電位が起こす電気信号によって伝わり、葉枕下部の細胞のアクチンがばらばらになって水分が出ていき、下垂します。

下垂してから20分もすると、葉枕の下部のアクチンが正常に戻って、葉は元に戻ります。

オジギソウのメカニズム

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。


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