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空前の繁栄を迎えたアッバース朝とは?【世界の宗教】

Text:星川啓慈

征服・支配から諸民族の融合へと変化した

前項でお話ししたとおり、スンニ派は4代目以降のカリフとしてウマイヤ朝の子孫しか認めませんでした。そのため、スンニ派以外の派を厳しく弾圧する一方で、被征服民に対しては、一定の宗教的自由を認めることによって、イスラム帝国の拡大・発展を進めていったのです。

ウマイヤ朝の後期には、*ササン朝ペルシャも滅ぼし、その版図は北アフリカからスペイン、中央アジア、インダス川流域にまで拡大しました。しかし、イスラムの教えに対する世俗的な解釈やアラブ民族重視政策などによって、敬虔(けいけん)なムスリムや非アラブ人の反発を生んで反政府運動が起こり、750年にウマイヤ朝は滅びます。

このあとに成立したのが、ムハンマドの血筋に近いアッバース朝です。この王朝時代に、下部の地図にあるように、イスラム帝国は空前の繁栄を迎えます。商人たちはアフリカ、インド、アジア、中国などと広域貿易を行なうとともに、イスラム教の布教も活発に行ないました。

アッバース朝は、国家統一の原理をイスラム教としました。それによって、イスラム教の教義が整備されるとともに、イスラム法(シャリーア)も定められました。

また、神学はじめとする多彩な学問も大いに栄え、イスラム教はアッバース朝の繁栄とともに、独自のイスラム文化を開花させていきました。

正統カリフ時代のウマイヤ朝では、アラブ人による征服・支配という側面が強かったのですが、アッバース朝になり諸民族の融合した巨大帝国になっていったのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の宗教』
監修:星川啓慈 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1956年生まれ。1984年、筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程単位取得退学。1990年、日本宗教学会賞受賞。現在、大正大学文学部教授。博士(文学)。専門は宗教学・宗教哲学。主な著書に、『言語ゲームとしての宗教』(勁草書房、1997年)、『宗教と〈他〉なるもの』(春秋社、2011年)、『宗教哲学論考』(明石書店、2017年)、『増補 宗教者ウィトゲンシュタイン』(法藏館、2020年)など。


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