奈良・平安・鎌倉の各時代に多くが誕生する
奈良時代に入ると、苦難の末に日本にたどり着いた中国の僧、鑑真(がんじん)(688〜763年)が孝謙天皇(こうけんてんのう)(718〜770年)の勅命(ちょくめい)により、東大寺(とうだいじ)に*戒壇(かいだん)を築き、僧への受戒制度(じゅかいせいど)を整備しました。受戒というのは、入信希望者に対して戒律に従うことを約束させる儀式で、これによって真剣に仏教に取り組もうとする者だけが、僧として認められるようになりました。
この動きと呼応するように、奈良の都に「南都六宗(なんとろくしゅう)」という宗派が形成されていきます。法相宗(ほっそうしゅう)・三論宗(さんろんしゅう)・倶舎宗(くしゃしゅう)・成実宗(じょうじつしゅう)・華厳宗(けごんしゅう)・律宗(りっしゅう)という六つの宗派です。いずれも中国で大成されたものが渡来したのですが、宗派といっても、宗派間の垣根はあまり高くなく、複数の宗派を学ぶ者も多数いたようです。
平安時代になると、ともに中国で学んだ僧の最澄(さいちょう)が比叡山延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ)を拠点に天台宗(てんだいしゅう)を、空海(くうかい)が高野山金剛峯寺(こうやさんこんごうぶじ)を拠点に真言宗(しんごんしゅう)をそれぞれ開き、新しい仏教が成立していきます。さらに当時は、飢饉、大火、地震などが頻繁に起こり、人々の心を不安にしていきました。このため、ひたすら念仏(ねんぶつ)を唱えることで極楽浄土(ごくらくじょうど)への往生(おうじょう)を願う、浄土信仰(じょうどしんこう)が急速に拡大していきました。
この浄土信仰から、法然(ほうねん)による浄土宗(じょうどしゅう)、さらに時代が下って親鸞(しんらん)による浄土真宗(じょうどしんしゅう)(一向宗=いっこうしゅう)が生まれ、広く民衆から支持されます。
禅宗(ぜんしゅう)が登場したのが鎌倉時代です。栄西(えいさい)の臨済宗(りんざいしゅう)、道元(どうげん)の曹洞宗(そうとうしゅう)が、新興勢力である武士階級を中心に広まります。また、日蓮(にちれん)による日蓮宗(にちれんしゅう)、一遍(いっぺん)による時宗(じしゅう)も同じころに現れました。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の宗教』
監修:星川啓慈 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1956年生まれ。1984年、筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程単位取得退学。1990年、日本宗教学会賞受賞。現在、大正大学文学部教授。博士(文学)。専門は宗教学・宗教哲学。主な著書に、『言語ゲームとしての宗教』(勁草書房、1997年)、『宗教と〈他〉なるもの』(春秋社、2011年)、『宗教哲学論考』(明石書店、2017年)、『増補 宗教者ウィトゲンシュタイン』(法藏館、2020年)など。
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公開日:2022.04.28