乗務員の裁量で全体の時間を調整
正確性や信頼性は世界でも指折りの日本の鉄道。しかし、時刻表に記された時間より電車が早めに出発する駅もあります。鉄道業界では、そんな定刻通りに電車が出発する駅を「採時駅(さいじえき」)といい、反対に定刻前に出発する可能性のある駅を「非採時駅(ひさいじえき)」と呼んでいます。駅の間隔が短い大都市の通勤路線では、駅での乗降客が多ければ多いほど、発車時刻が遅れてしまうことが多くなります。そこで発車時刻を乗務員の裁量に任せる駅をつくることで、本数の多い路線でもスムーズに運行できるようになるのです。つまり、時間を確実に守る採時駅と、乗務員の裁量に委ねる非採時駅があるのは、時間調整のために欠かせないことなのです。
この制度を採用している路線では、採時駅は数駅に1駅の間隔で存在しています。時々、ホームに停車中の車内で「1分ほど停車します」といったアナウンスが流れることがあります。この場合は、その駅が採時駅で、発車時刻を調整している可能性が高いといえるでしょう。余談ですが、発車時刻というのはドアが閉まる時刻ではなく、ドアが閉まってから電車が動きはじめる時間です。時刻表が12時00分00秒発であれば、ドアが閉まるのは11時59分50秒くらいですので、乗り遅れのないように時間に余裕を持って行動しましょう。
時刻表の時刻は電車が動きはじめる時間
時刻表にあるのはドアが閉まる時間ではなく、電車が動きはじめる時間です。そのため、10秒ほど前にはドアが閉まることも。また、電車の発車時刻は秒単位で決められていますが、時刻表では秒が切り捨てられています。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 鉄道の話』 綿貫 渉
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 鉄道の話』
綿貫 渉 著
通勤・通学、旅行・おでかけ…私たちは普段何気なく電車や駅を利用していますが、なぜ安全に時間通りに運行できるのか、遅延や事故・トラブルの際はどう対処しているのか、意外と知らないことも多い鉄道の話。本書では、今さら聞けない基本的なしくみから、知るほど面白い鉄道の歴史まで、図解やイラスト付きでわかりやすく解説します。
公開日:2023.07.03