もしものときに備えた鉄道の設備
最高時速100kmを超えて走行することもある電車。速いうえに多くの乗客を乗せるため、走行には危険性が伴います。そこで鉄道には、万が一のときのための設備が備わっています。たとえば、運転士が電車の走行中に倒れてしまった場合。何十kmもの速度が出ている状態で運転士が倒れてしまうと、操縦する人が不在となるので大変危険です。このような場合に備えてEB装置(Emergency Brake=緊急列車停止装置の略)、デッドマン装置というものがあります。
前者は、走行中に運転士がいずれかの運転操作を60秒間行わないとブザーが鳴るしくみです。それでも反応がない場合は、運転士に異常があると判断し、自動で非常ブレーキがかかります。後者は、車両を制御するペダルやマスターコントローラーにスイッチがついており、一定時間運転士がそのスイッチを操作していない状態が続くと警報音が鳴ります。反応がなければEB装置と同様に、非常ブレーキが自動でかかります。また緊急時には、人の手で非常ブレーキをかけ、電車を停止させることも可能です。運転士だけでなく、電車の後ろに乗務している車掌も非常ブレーキをかけられます。前はもちろん後ろからも、常に電車の安全を確認し、緊急時にとっさの判断ができるよう備えているのです。
運転士に異常が起きても事故を防ぐしくみ
鉄道は事故を防ぐために多くの安全装置が設置され、どのような異常にもしっかり対応できる体制が整えられています。
EB装置
運転士が60秒間、運転操作をしないと・・・・・・
アラームが発動
5秒以内にアラームを解除しないと列車は自動的に停止します。
デッドマン装置
一定時間、ハンドルまたはペダルから離れると・・・・・・
アラームが発動
ハンドルの裏、もしくはペダルに設置されてるデッドマン装置。運転士の体から離れると、一定時間経過後に非常ブレーキがかかります。
乗客の安全を守る駅構内のさまざまな装置
ホームドアの設置
設置が進められていますが、設置率が最も高い東京都でも、設置されている駅は5割弱に留まっています(2022年3月時点)。
ホーム端の点字ブロック
ホームの端に点字ブロックが設置されています。必要としている人がいるため、ブロックの上で立ち止まったり、荷物を置いたりしてはいけません。
列車非常停止ボタン
線路内に人が立ち入ったり、転落した際に押すことで、電車を非常停止させることができるボタンです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 鉄道の話』綿貫 渉
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 鉄道の話』
綿貫 渉 著
通勤・通学、旅行・おでかけ…私たちは普段何気なく電車や駅を利用していますが、なぜ安全に時間通りに運行できるのか、遅延や事故・トラブルの際はどう対処しているのか、意外と知らないことも多い鉄道の話。本書では、今さら聞けない基本的なしくみから、知るほど面白い鉄道の歴史まで、図解やイラスト付きでわかりやすく解説します。
公開日:2023.07.30