マントルはなぜ対流しているのか
コンビニで炭酸水のペットボトルと干しぶどうを買ってきます。このペットボトルの中に干しぶどうを数粒入れて、何が起きるのか観察します。なんと炭酸水の中に落ちた干しぶどうは浮いてきたり、沈んだり、ダンスを始めるではないか!
これは「踊る干しぶどう」として知られる有名な実験です。よくみていると興味深い運動をしていることがわかります。底のほうで静かにしていると思いきや、突然浮き上がる、水面に達するとクルッと水泳選手のようなターンして沈み込む、全然浮かび上がってこないのがいる、ときどきムクッと途中まで上がるのだけれど、力足らず沈む。ガンバレ!だんだん干しぶどうが愛おしくなり、応援したくなります。さて、水よりも重いはずの干しぶどうがなぜ浮き上がるのでしょうか?
底で静かにしている間に、干しぶどうのシワシワの表面に炭酸ガスのバブル(泡)がくっついていくことが観察できます。ガスバブルは軽いのでたくさんつくとその浮力で浮かび上がる一方、水面では空気中にガスバブルが放出されるために再び重くなり沈んでいくのです。この一連の動きで、炭酸ガスはペットボトルの底から空気中に輸送れたことになるわけです。これと同じことが地のマントルでも生じているのです。
マントルの場合、炭酸ガスではなく「熱」、干しぶどうはマントルをつくる「岩石・鉱物」です。高温のマントルの下部で熱を受けとり、温度がくなった岩石は熱膨張で軽くなります。上昇し、地表付近でこの熱を放出すると、今度は重くな沈降していくわけです。
このような上昇・下降のサイクルを熱対流現象と呼びます。マントルも対流しており、その運動によってさまざまな地質現象が駆動されます。残念ながら熱をみることはできないのですが、干しぶどうにくっついたバブルは観察することがきでます。
夏目漱石の弟子で随筆家・俳人でもあった物理学者寺田寅彦は、茶碗の湯に立ち上る湯気をみて熱対流に思いをはせました。私たちは踊る干しぶどうをみてマントル対流を想像しましょう。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地学の話』
【書誌情報】
『図解 地学の話』
著者:高橋正樹 他
地学は「地球を対象とする自然科学」の学問。ジャンルが幅広く興味深い話題も多い。地球の誕生から、火山や地震のメカニズム、異常気象や天気図、地層・化石まで、「地球物地学」「火山学」「気象学」「地質学」の4テーマに分けて解説。図解で楽しくわかりやすく勉強になる1冊。
公開日:2022.02.07