赤い肉と赤い魚で鉄不足を防ぐ
子どもの約7割が鉄不足!
子どもの成長に欠かせない栄養素の中でも、一番に挙げたいのが「鉄」です。鉄の役割を知れば、その大切さを理解できるでしょう。
鉄の役割
●全身に索を運ぶ赤血球をつくるために必要となる
●食べ物から効率よくエネルギーをつくり出す
●やる気や集中力などを司るドーパミンや、気持ちを落ち着けたりドーパミンの分泌をコントロールしたりするセロトニンの生成を助けて、心のバランスを整える
このように、鉄は健康な心身を維持するために久かせない栄養素なのです。鉄が足りなくなると、心身にさまざまな不調が現れることがあります。乳児であれば、発育・発達の遅れや運動機能・認知機能の低下、易感染性(感染症にかかりやすくなる)など。成長期の子どもや大人であれば、爪がもろくなる、頭痛、肩こり、耳鳴り、めまい、胃弱、冷え症、疲れやすいなどの症状が見られることも。いくつか当てはまる人は、鉄不足を疑ってもよいかもしれません。
たくさんのエネルギーが必要となる成長期には、鉄を十分に摂ることが大切です。しかし、日本人は大半が鉄不足といわれており、*²小児・青少年の潜在的鉄欠乏の割合は約7割にもおよぶとされています。*³とくに乳児期には、生まれたときにお母さんから受け取る鉄が足りないこと、乳児期に効率よく鉄を摂取するための手段(サプリや鉄が添加された食品など)が少ないことから、健やかな成長・発達・発育に矢かせない鉄が足りていない子どもがたくさんいるのが現状です。
鉄欠乏の子どもの症状例
情緒不安定、注意散漫・関心の低下、集中力の低下、記憶力低下、学習障害、睡眠障害、食が細い、運動時の動悸・息切れ など。
ヘム鉄を含む食べ物で効率よく鉄を摂ろう
鉄を含む食べ物には、ヘム鉄を含むものと非ヘム鉄を含むものがあります。*⁴へム鉄は吸収率が15~25%あるのに対し、非ヘム鉄は3~5%程度と低め。
効率よく鉄を摂るなら、ヘム鉄を豊富に含む赤身肉(とくにもも肉やヒレ肉)、赤身の魚(カツオ、イワシ、マクロなど)を積極的に食べるとよいでしょう。レバーは赤身肉より多くのヘム鉄が摂れるので、苦手でなければぜひ。ただし、ビタミンAがかなり多く含まれているので、食べる場合は週1回程度にとどめるとよいでしょう。
意外に思われるかもしれませんが、じつはしらすも青魚で、鉄とピタミンDを登富に含む優秀な食べ物。子どもでも丸ごと食べられるのでおすすめです。
非へム鉄を含む食べ物としては、ほうれん草、貝類、豆類、卵、乳製品などが挙げられます。
子どもは大人に比べてたくさんの昼を食べられないので、少量で多くの鉄を含み吸収率の高いヘム鉄を含む食べ物で、効率よく鉄を摂りましょう。
子どもが鉄欠乏になる原因の例
●成長期の鉄の需要量増加(人生でもっとも成長するのは乳児期、2番目が思春期)
●偏食や不適切なダイエット
●生理で鉄が排出されてしまう など
鉄を多く含む食べ物
効率よく鉄を摂るならヘム鉄を含んだ食べ物を。鉄はビタミン C と一緒に摂ると、吸収率がアップします。
ヘム鉄を多く含む食材
鉄の吸収率15~25%程度
非ヘム鉄を多く含む食材
鉄の吸収率3~5%程度
*²張替秀郎(2015)『鉄代謝と鉄欠乏性貧血―最近の知見―』日本内科学会雑誌
Vol.104 No.7
*³井ノ口美香子(2018)『母乳育児の留意点』小児内科Vol.50 No.7
*⁴稲葉雄二、小池健一(2009)『特集 臨床に役立つ貧血治療の実際 鉄欠乏性貧血
-食育の観点から-』小児科診療Vol.72 No.2
【出典】『小児科医ママが教えたい 体・脳・心を育てる!子どもの食事』著:工藤紀子
【書誌情報】
『小児科医ママが教えたい 体・脳・心を育てる!子どもの食事』
著:工藤紀子
子どもに栄養バランスのよい食事をいっぱい作ってあげたい、子どもには元気にすくすくと育ってほしいなどの思いに応えるため、子どもの体・脳・健康と成長をサポートするための知識やアイデアを紹介しています。「小児科医ママが教えたい 体・脳・心を育てる!子どもの食事」では、楽に楽しく安全にをモットーに、身近でさほど効果でない食材で食事の悩みを解決していきましょう。
公開日:2024.07.06