経口補水液は薬の気持ちで「点滴飲み」
大量の糖分がビタミンB¹欠乏の原因に
風邪をひいたとき、熱が出ているとき、夏の暑いときはスポーツドリンクや経口補水液がよいというイメージはありませんか。
しかし、「すぐに水分補給ができる」「健康にいい」「ビタミンが摂れる」というイメージから日常的に大量に飲んでいる場合、どのような影響があるでしょうか?
一般的なスポーツドリンクには、100mLあたり約5gの糖分が含まれています。500mLのペットボトルの場合、大さじ2杯弱の糖分を摂ることになるのです。
私たちの体内で糖分を分解してエネルギーをつくり出すにはビタミンB¹が必要です。糖分たっぷりのスポーツドリンクばかりをがぶ飲みすると、たくさんの糖を分解するために体内のビタミンB¹を使ってしまい、足りなくなってしまうことがあります。
ビタミンB¹欠乏が引き起こす症状
●全身症状:嘔吐、脚気、倦怠感(元気がない、ぐったりしているなど)、むくみ、食欲低下、体重増加不良(月齢や年齢に比べて体重があまり増えない)
●心不全症状:心拡大(心臓が大きくなる)、肺高血圧、浮腫、心原性ショック(心筋が正常に機能しなくなりショック症状が起きる)
●神経症状:意識障害、腱反射減弱、筋力低下、眼球運動障害、けいれん
多くはありませんが、スポーツドリンクや経口補水液の飲みすぎによってビタミンB¹が不足すると、さまざまな症状を引き起こす可能性があり、実際に報告もあります。
熱中症と似た症状が現れる場合もあるため、熱中症の患者さんと間違われ、点滴をしても改善しなかったというケースもあるそうです。
また、スポーツドリンクにはナトリウム(塩分)も含まれますが、その量は経口補水液の3分の1ほど。脱水を予防、治療するには足りません。汗をたくさんかくとき、激しい運動をするときにスポーツドリンクばかりを大量に飲むと、血液中のナトリウム濃度が下がり、低ナトリウム血症(水中毒)を起こすこともあります。
「点滴飲み」でチビチビ飲むのは経口補水液
ちょっと汗をかくな、というときにスポーツドリンクを飲んでもよいですが、一緒にお水も飲むこと、適切な量の塩分を含む食事をとることが必要です。つまり、摂りすぎている糖分を薄め、足りない塩分を補う必要があります。
猛暑日やスポーツで子どもが汗をたくさんかくとき、嘔吐や下痢で体からたくさん水分と塩分が出ているときには、経口補水液を飲むとよいでしょう。そのさいに注意したいのが、チビチビひと口ずつ何度も飲むこと。
この飲み方を、私たち医者の間では「点滴飲み」と呼ぶこともあります。点滴はポタポタと液体が落ちていますよね、あのイメージです。経口補水液は、熱中症予防のため、嘔吐・下痢のときの治療のために飲むイメージでいるといいかもしれません。
おうちでつくれる熱中症予防ドリンク
経口補水液が必要になったときのために、おうちにある材料だけで、手軽につくれるレシピを覚えておくのもよいでしょう。つくった日に飲み切るようにしましょう。
準備するもの
● 水 1000mL
● 塩 小さじ1/2(2.5g)
● 砂糖 大さじ4と1/2
● レモン汁 少々
1 水に塩を入れる
水の代わりに麦茶でつくってみてもよいでしょう。
2 砂糖を加える
糖分を控えたいときは、砂糖の分量を調整したり、甘味料で代替したりしましょう。
3 レモン汁を混ぜて完成
レモンには、熱中症予防に役立つカリウムが含まれています。
参考:厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」
【出典】『小児科医ママが教えたい 体・脳・心を育てる!子どもの食事』著:工藤紀子
【書誌情報】
『小児科医ママが教えたい 体・脳・心を育てる!子どもの食事』
著:工藤紀子
子どもに栄養バランスのよい食事をいっぱい作ってあげたい、子どもには元気にすくすくと育ってほしいなどの思いに応えるため、子どもの体・脳・健康と成長をサポートするための知識やアイデアを紹介しています。「小児科医ママが教えたい 体・脳・心を育てる!子どもの食事」では、楽に楽しく安全にをモットーに、身近でさほど効果でない食材で食事の悩みを解決していきましょう。
公開日:2024.07.17