10:この先の順序や流れをどうするのか?イメージできないノープランな世界
○エピソード
母は専業主婦で、昔から料理が得意でした。しかし最近では料理の途中で手が止まり、何か考え事をしているようです。また、得意料理の味付けも毎回変わるようになりました。最近は進んで料理をやらなくなってきました。
【あるある行動】料理の手順がわからなくなった
認知症になると、少し先の計画を立てづらくなります。そのため、入浴や排泄、身じたくなどの日常的な行動の始まりから終わりまでの一連の手順がわからなくなることがしばしばあります。これは、行動の流れのうち、一部のやり方や道具の使い方、直前にしていたことを思い出せないなど、部分的な記憶が失われていることにより生じます。記憶をつなぎ、保持(エピソード記憶)していくことは、生活する上でとても大切な機能なのです。
出先でこのような特徴が出ると、ATMの使い方、買い物のしかたがわからない、お店までの行き方がイメージできないなどで困ります。1度に複数の場所を巡れず、1回1回家まで戻り、再度外出して用事をこなすという例もあります。
少し先の未来がわからないと、「これから何をしたらよいのだろう」と、途方にくれてしまうでしょう。このケースでも、「次に何をするのだったか思い出せない……」と焦り、立ち尽くしているようです。
こういった経験が重なると、「失敗してしまうのではないか」「できないのでは」という不安を感じ、自分を守るために積極的に動けなくなる人もいます。
○もしあなたがこの世界にいたら?
何かやりたいことがあっても、実現させる具体的なイメージがわかない場合、あなたはどうするでしょうか?「行き当たりばったり」になってしまうのではないでしょうか?
【出典】『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子
【書誌情報】
『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』
著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子
認知症は、理解しにくい言動を引き起こす脳の病気です。家族が「どう言葉をかけたらいいんだろう」「どう接したらいいのかな」「とてもつらい」と感じることが多いでしょう。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」では、介護現場の専門家が日々の接し方や対応のヒントを提供し、プロの視点と方法で、家庭での介護が少しでもラクになるように、ご本人とともにかけがえのない日々を過ごしてほしいという願いが込められています。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」を活用して、実践してほしいと思います。今後のためにも読んでおきたいおすすめの一冊です。
公開日:2024.07.11