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わかりやすいようでいて必ずしもそうとは言えない知的発達症群(ID)の診断に必要な3つの要素とは?【心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話】

Text:湯汲英史

・同年代と比較して知的発達に遅れがある

・知能指数(IQ)が70以下

・日常生活への適応が困難

・発達期(おおむね18歳まで)に発生

・精神遅滞とも呼ばれる

日常生活を送ることが難しいケースも

「知的発達症群(ID)」は、同年代と比較して知的発達に遅れがあり、日常生活への適応に困難が伴うという特性です。「知的機能」「適応機能」「発達期」の3要素から診断されます。

知的機能の診断基準は、知能検査(平均知能指数100、標準偏差15)の結果、知能指数(IQ)が70以下となっています。そして、適応検査では、対人関係のスキル、社会生活への適応、生活習慣が確立しているかなどを心理職が観察して診断します。最後に、両検査の結果を踏まえ、18歳までの発達期に知的機能と適応機能の問題が認められたかどうかが診断され、最終的な診断が下されます。

診断の結果、知的発達症群と診断されると、知能指数を基準に適応検査の結果を考慮して、重症度により軽度、中等度、重度、最重度に分類されます。かつては、知能指数のみで判断されていましたが、現在は実際に生活できる能力がどれくらいあるかも考慮されています。

症状が重い場合、幼児期の早い段階で「言葉数が少ない」「理解している言葉が少ない」といった症状から疑われますが、症状が軽い場合は気づかれずに成長し診断も遅くなります。

<ミニコラム> 知能指数はひとつの目安に過ぎず言葉の能力も人それぞれ

知的発達症群は、わかりやすいようでいて必ずしもそうとは言えません。ひとり一人の能力には差があり、IQがたとえば50でも、まったく同じ能力の人はいないのです。また、言語の能力も、その理解度や使い方などに差があります。話せないから障害が重いかといえば、そうとも言い切れません。なぜなら、理解力が高い人もいるからです。

【出典】『心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話』
監修:湯汲英史(ゆくみえいし)  日本文芸社刊

監修者プロフィール
公認心理師・精神保健福祉士・言語聴覚士。早稲田大学第一文学部心理学専攻卒。現在、公益社団法人発達協会常務理事、早稲田大学非常勤講師、練馬区保育園巡回指導員などを務める。 著書に『0歳~6歳 子どもの発達とレジリエンス保育の本―子どもの「立ち直る力」を育てる』(学研プラス)、『子どもが伸びる関わりことば26―発達が気になる子へのことばかけ』(鈴木出版)、『ことばの力を伸ばす考え方・教え方 ―話す前から一・二語文まで― 』(明石書店)など多数。


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