打球の散らばりを減らすときの方法①
動きを抑えるのでなく動きが小さくなるよう準備をする
制約範囲の中でフルスイングする
まず、打球は曲がるものだということは伝えておきたいと思います。真っすぐのボールは、クラブパスとフェースの向きがどちらとも飛球線に向かって誤差がない状態が実現した場合に打ち出されますが、プロでもなかなか両者をぴったりに合わせるのは難しい。だからどちらかに曲がるボールを持ち球とし、どちらかに曲げることを前提として、理想のスイングを追い求め、精度を高めることで曲がり幅を狭めることを目指しています。
その上で、左右のブレを極力抑えるために「ライン出し」という技術があると言われますが、これは通常のスイングからかけ離れた特別な技術というわけではありません。ブレを抑えるために、動きを「抑える」とか、ボールを(上から)抑えるようなイメージは、ミスの原因となります。不要な動きが加わったり、中途半端に動きが止まったりしやすくなるからです。
ブレを抑えるために、動きをコンパクトにするとか、ヘッドスピードを少し遅くするというアイディアは悪くないのですが、自分の意識でそれを実行しようとするのは思っているよりかなり難しい技術です。自分でコンパクトにしよう、遅く振ろうとするのではなく、「結果的に動きが自然にコンパクトになり、スピードが遅くなるようにしておく」のが正解なのです。スタンス幅を小さくすることが一番シンプルだと思います。スタンス幅を小さくするだけで、スイングの振り幅を小さめにイメージできます。体重移動も少なめになるはずです。体重移動はまったくしないで振るくらいのイメージでもいいかもしれません。そして目線を低くする。これも、自然とスイングを小さくしてくれます。
こうしたイメージを持つことは、つまり「飛ばない準備をしている」とも言えます。距離が出れば出るほどブレ幅は拡大します。距離を抑えれば、ブレ幅も小さく抑えられるわけです。決して特別なことをするわけではありません。全体のスイングの動きの大きさがイメージできたら、「その制約の中で、しっかりと振り切る」ことが成功のカギとなります。飛ばない準備をしたら、その範囲におけるフルスイングをイメージしてください。
スタンスを狭めると振り幅も小さくなる。コンパクトになった振り幅の中でしっかりと体を使って振り切ることを考える。
出典:『ゴルフ当たる!飛ばせる!スウィング解剖図鑑 イラストでわかる身体とクラブの正確な使い方』著/奥嶋誠昭
【レッスンプロ情報】
●奥嶋誠昭
1980年生まれ。ツアープロコーチ。アマチュアゴルファーからツアープロまで最先端機器を使ったバイオメカニクス(動作のコツを解析する)をもとに、ゴルファーの要望に合ったスイングづくりに定評がある。JGTOツアープレーヤー。2020―2021年国内女子ツアー賞金王、東京五輪銀メダリストの稲見萌寧など、数多くのトッププロ選手の指導実績を持つ。
【書誌情報】
『ゴルフ 当たる! 飛ばせる!スウィング解剖図鑑 イラストでわかる身体とクラブの正確な使い方』
著者:奥嶋誠昭
スウィングづくりやスウィングレッスンをテーマとする多くのゴルフ書は、写真、動画などの映像を使ってスウィング時の身体の動きを解説する。
その見せ方では、手や足、身体の動きや動かし方は表現できても、例えば「インパクトを感じる手の感覚」「インパクト時の足の感覚」といった、スウィング時の身体が感じる感覚までは伝えづらい。そこで本書では、スウィングで体感する手や足の感覚をイラストでできる限り具体化し、読者にその感覚をつかんでもらい、スウィングづくりの向上を目指す。著者は、スウィングの解析システムを駆使し、プロ、アマ問わず多くのゴルファーのスウィングを分析している奥嶋誠昭プロ。同プロ独自のスウィング動作をイラストを通して解剖、図解化し、ゴルフスウィングの上達に役立てる。
公開日:2024.04.29