財産分与の前に財産が消えないように!勝手な財産処分を防ぐ方法
勝手な財産処分を防ぐ3つの方法
財産分与や慰謝料を決める前に相手が財産を隠したり処分したりしてしまったら、支払われるべきお金が支払われないということになりかねません。このような事態を防ぐために、相手が勝手に財産を動かさないよう裁判所に申し立てることを保全処分といい、次の3つの方法があります。
①調停前の仮処分
調停期間中に、調停委員会が財産処分を禁じることができる。従わない場合は10万円以下の過料に処せられるのみで法的強制力がないため実行性に乏しく、利用件数は少ない。
②審判前の保全処分
家庭裁判所に財産分与などを請求する審判を申し立てる際、 「審判前の保全処分」も申し立てることができる。申立てが認められると、家庭裁判所が仮差押え、仮処分を命じる。仮差押えの場合に担保として保証金が必要になる。
③民事保全
法的な離婚や慰謝料原因理由があり、相手が財産を隠している証拠があれば、いつでも家庭裁判所または地方裁判所に申し立てることができる。認められると、仮差押え、仮処分を命じる。手続きには保証金が必要で、高額になることがある。
相手の財産を把握しておく
保全処分を行う財産は、申してる側が指定するため、給与、預貯金、 不動産など、 相手の財産をしっかり把握しておきましょう。相手が生活できなくなるなどの理由で認められないこともあります。
ポイント
- 財産分与前に財産の名義変更を処分される心配があるときも、保全を行う。
- 保全処分を行う際は、法的強制か「民事保全」力がある「審判前の保全処分」を申し立てるとよい。
財産を勝手に処分させない方法と手続きの流れ
保全処分の3つの方法
【1. 調停前の仮処分】
強制力:ない
申立ての時期:調停が始まる時
保証金:不要
【2. 審判前の保全処分】
強制力:ある
申立ての時期:審判を申し立てるとき、調停中
保証金:必要
【3. 民事保全】
強制力:ある
申立ての時期:いつでも
保証金:必要
民事保全手続きの流れ
【民事保全手続きの流れ】
1. 申立て
家庭裁判所か地方裁判所に、申立書、申立手数料(原則 2,000 円)、財産の 証拠、郵便切手などを提出する
2. 面接
本人確認資料(運転免許証など)、申立書作成時に使用した印鑑、証拠の原本を持参する
3. 立担保証明
法務局に保証金を預け、供託書とその写し、必要書類を裁判所に提出する
4. 保全決定
裁判所の窓口で保全決定正本を交付されるので、受領書を持参する
【森元先生からのアドバイス】保全処分は、調停中でも申し立てることができます。調停や裁判ほど時間がかかることはありませんが、相手が勝手に財産を処分するおそれがあるときは、早めに申し立てましょう。
【出典】『増補改訂版 前向き離婚の教科書』著:森元みのり
【書籍情報】
『増補改訂版 前向き離婚の教科書』
著:森元みのり
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公開日:2024.06.10