裁判離婚でよくある理由②「配偶者暴力」
証拠を集め、警察などに相談する
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、家族など親密な関係の相手から受ける暴力のことをいいます。身体的な暴力だけでなく、無視をするなどの精神的暴力や、お金を渡さないなどの経済的暴力なども含まれます。
配偶者からの暴力で離婚を考えはじめたら、証拠を集めましょう。身体的暴力なら、被害の様子がわかる写真や動画、医師の診断書のような、暴力を受けたことを客観的に証明するものを揃えます。
証拠集めと同時に、警察、配偶者暴力相談支援センター、女性センターなどに相談しておきましょう。相談した記録は、後日、個人情報開示手続きをして取り寄せることができます。
身の安全を確保する
配偶者から暴力を受けている場合は、身の安全を確保することも大切です。そのためには、別居も有効手段のひとつです。緊急性の高い場合は、配偶者暴力相談支援センターの一時保護や、DVシェルターを利用することもできます。さらに、加害者に避難先を知られないよう自治体に住民基本台帳の閲覧制限を求めるとよいでしょう。
配偶者から生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、地方裁判所に保護命令を申し立てましょう。保護命令が認められると、加害者が被害者に付きまとうことや、居住先・勤務先付近を徘徊することが6か月間禁止されるなどの措置がとられます。
ポイント
- 住民基本台帳の閲覧制限をするには、DV被害を証明する警察や配偶者暴力相談支援センターなどの意見、もしくは保護命令決定書の写しが必要。
- 保護命令は、子どもや親族も保護の対象になる。
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは?
【身体的暴力】
・殴る、蹴る
・刃物を突き付ける
・物を投げる
・髪を引っ張る
・首を絞める
【精神的暴力】
・暴言を吐く
・大声でどなる
・無視する
・人の前でバカにする
【社会的暴力】
・家族や友人と付き合うことを制限する
・メールや手紙を細かくチェックする
【性的暴力】
・性行為を強要する
・避妊に協力しない
・中絶を強要する
【経済的暴力】
・生活費を渡さない
・外で働くことを認めない
・仕事を辞めさせる
【DV による離婚を考えたときにすべきこと】
1.証拠を集める
暴力の内容や被害の様子がわかる写真・動画、医師の診断書など
2. 相談する
警察(警察相談専用電話# 9110 など)、女性センター、配偶者暴力相談支援センターに相談し、相談の記録をもらう
3. 別居する
配偶者に知られにくい安全な別居先を確保する
※緊急時は、配偶者暴力相談支援センターの一時保護や NPO 法人などの民間シェルターを利用することもできる
4. 保護命令を申し立てる
事前に警察などに相談してから、地方裁判所に申し立てる
森元先生からのアドバイス
せっかく DV の証拠を確保しても、別居前に配偶者に見つかると間違いなく破棄され、さらに DV が悪化する危険もあります。信頼できる親族の手元や職場などに証拠やそのコピーを保管することも考えましょう。
【出典】『増補改訂版 前向き離婚の教科書』著:森元みのり
【書籍情報】
『増補改訂版 前向き離婚の教科書』
著:森元みのり
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公開日:2024.07.01