自宅でできるセルフケアで不安を軽減する①
認知行動療法や薬物療法のほかに、生活習慣を見直すことで不安が軽減されることもあります。まずは運動や生活リズムの観点から治療方法を見てみましょう。
まずは体を動かすようにしてみる
これまでも見てきたように、不安障害を発症するきっかけには極度のストレスや疲労の蓄積がかかわっていることがほとんどです。発症後の医師による薬物治療や認知行動療法は確かに有効ではありますが、症状をこれ以上悪化させないように、日頃のセルフケアでストレスや疲労をコントロールしておくことも重要な「治療」のひとつといえるでしょう。
もちろん、不安障害はどんな人でもかかる可能性のある病気なので、予防策として、健康な人も実践しておくとよいでしょう。
不安障害の人は、外出に抵抗を感じる人が多くいます。一部の場合を除けば、家の中のほうが、外より「安心安全」という考えは確かにうなずけます。しかし、外出が減ることによる運動不足は、心の働きに悪い影響をもたらします。
例えば、ウォーキングやジョギングといった有酸素運動は不安や抑うつ感の軽減に効果があるといわれています。また、太陽光を浴びると不安状態で不足しがちなセロトニンの分泌も促進されます。そのため、ストレスに感じない程度の距離と頻度で、近所の散歩やウォーキングなどをするとよいでしょう。
どうしても日中の外出に抵抗があるという場合は、日光が差し込む部屋の中で体操やストレッチをする、人目の少ない早朝や夜間に歩く、といった方法でも構いません。
自律神経を整える生活リズム
自律神経を維持している「交感神経」と「副交感神経」の働きは、「アクセル」と「ブレーキ」にたとえることができます。両方がスムーズに作動しなければ、車をうまく運転することはできません。
朝は決まった時間に起き、日光を浴びるとよいでしょう。起床後30分くらいまでがセロトニンの生成のピークです。また、シャワーを浴びるのも効果的です。皮膚に対する刺激と体温の上昇で心身が目覚め、交感神経の活動を促進します。
日中のセロトニン生成が不足していたり、適度な疲労がなかったりする状態だと、夜間の副交感神経への切り替えがうまくいきません。不安障害の症状は、交感神経が過剰に反応している状態であるため、それを抑える副交感神経の働きを保つことは非常に重要です。
また、タバコやカフェインは交感神経を刺激し、副交感神経の働きにはよくない影響を与えるため、できれば控えたほうがよいでしょう。
とはいえ、以上のことを「やらなければ」と考えるとストレスの原因になるので、「なるべくやるようにしよう」というくらいの心の余裕を持って行いましょう。
不安を減らす生活習慣
体を動かさないと、心の動きも鈍くなり、不安や落ち込みといった感情が強まってしまいます。また、パニック発作の誘因になるカフェインやタバコのとりすぎにも注意しましょう
タバコやカフェインに注意
紅茶や緑茶、コーヒーなどに含まれるカフェイン、タバコなどは、パニック発作の引き金になる場合があるので、なるべく控えましょう。
よく眠る
睡眠が不足していると疲労がとれず、パニック発作を起こす可能性を高めます。しっかりと眠って基礎体力をつけることが大切です。
お酒を控える
お酒は眠りの質を低下させます。また、飲酒直後は不安が減りますが、時間が経つと刺激作用が強まり、かえって不安が強まります。
適度な運動をする
定期的かつ適度な運動は心身のバランスを保つだけでなく、とりあえず「体を動かす」ことで、不安を紛らわすという効果もあります。
運動をすると、抗うつ効果のあるホルモンの産生がうながされるという研究結果もあります。意識的に体を動かすようにしましょう
CHECK!
- 運動不足は心の働きに悪い影響をもたらす
- 交感神経の過剰な反応を抑えるには生活リズムを整えよう
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修
【書誌情報】
『心の不調がみるみるよくなる本』
ゆうきゆう:監修
現代増加の一途をたどる「不安障害」。
不安障害とは払拭できないほどの不安や恐怖の感情が過剰に付きまとい、日常生活に支障をきたすような状態になることです。
一概に不安障害といってもさまざまな症状があり、突然理由もなく激しい不安に襲われて発作などを引き起こす「パニック障害」や、謎の強迫観念にとらわれて意味のない行為を繰り返す「強迫性障害」、若者に多く人前にでると異常に緊張して体調を崩す「社交不安障害」などタイプは異なります。
本書ではそのような不安から引き起こされる心の不調について、症状例をそえて専門医がわかりやすく解説。自分の「不安障害度」を簡単にチェックできる診断テストも掲載。病気を自覚し、その症状にあわせた治療を受けられるようサポートする一冊です。
公開日:2024.12.28