家庭より友人関係の影響が大きい
少年の非行が取り上げられると、その家庭環境に目が向けられることが多くあります。たとえば、両親から暴力を受けて育つと、子どもは問題解決の手段として、相手を攻撃するのが一般的だと考えてしまうようになりがちです。
ただし、実証的な研究によると、非行の原因としての家庭環境は、一般に考えられているほど大きくはなく、むしろ友人関係の方が大きいという見解が多くなっています。
もちろん、家庭に問題があるため、子どもが家に居着かず、それが不良交友関係を形成するための原因になるということはあります。また、親子の関係が希薄だと、子どもがどこで誰と遊んでいるかわからず、非行グループと接触していることに気づきにくいこともあるでしょう。ただ、それはいずれも直接的な原因ではないため、家庭環境に問題があることで非行に走るというのは、短絡的な考えと言えるのです。
非行の原因としては、友人関係の影響のほか、本人のパーソナリティの問題も大きいものです。欲望や感情を抑えられない、欲求不満耐性が弱いといったセルフコントロールがとれないタイプが非行に走りやすいとされています。もちろん、実際に犯罪を犯したあと、少年を更生させるプロセスでは、家庭の存在が重要であることは間違いありません。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
監修:越智啓太
監修者プロフィール
法政大学文学部心理学科教授。1965年、神奈川県横浜市生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。臨床心理士。専門は犯罪捜査への心理学の応用。著書に『犯罪捜査の心理学』(化学同人)、『ケースで学ぶ犯罪心理学』(北大路書房)ほか多数。
昨今、様々な事件や特殊詐欺など凶悪な犯罪が増えており、ニュースで犯罪に関する情報を聞かない日はないといえます。誰もが利用するSNSを介した犯罪も当たり前になっており、より巧妙化しながら身近に潜む問題にもなっています。こうした問題や実態について研究し、犯罪予防や再犯防止に役立てようとするのが『犯罪心理学』です。
犯罪心理学は、心理学の中でも実際の現場や実践に役立つことを目的とした“応用心理学”の1つで、特に犯罪行動・非行や犯罪者の心理・行動パターンに焦点を当てた研究分野です。専門書や教科書が多いジャンルですが、本書では図やイラストを用いて、1トピックを見開き1ページでわかりやすく解説。
“普通の人”が犯罪に手を出してしまう経緯、犯行内容から見える犯人像や周囲の環境、巧妙化する手口や防犯法など、知らなかった犯罪心理学を、楽しみながらもしっかりと学べる一冊です。
公開日:2024.07.03