不良になる人とならない人
友人の影響で非行に走る人の事例は、サザランドによって提案された「分化的接触理論」である程度は説明できます。
私たちの行動のベースとなる価値観は、身近な他者からの学習によって作られます。そのため、学ぶ相手が法律を軽視し、反社会行動をとることがあると同じような行動をとるようになるのです。そして、同じような価値観の人といると安心感が生まれるため、不良グループに入ることになります。
ただし、この理論では不良とつき合っていても、非行少年にならない人がいるのはなぜかという疑問が生まれます。
その理由のひとつとされているのが「分化的同一化理論」です。グレイザーによると、直接接触することはなくても、テレビや映画で見た有名人などを理想とすれば行動の学習が可能だというのです。たとえば、ギャング映画を見て主人公に憧れれば、悪い人間になっていきます。しかし、活躍をしているスポーツ選手などに憧れれば、その人を目標として同一化しようとするのです。さらに、自分自身が善悪の区別に厳格であるというようなポジティブな自己概念を持っていれば、まわりに不良の友人たちがいても、不良グループには入りません。これを「非行絶縁体理論」と言います。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
監修:越智啓太
監修者プロフィール
法政大学文学部心理学科教授。1965年、神奈川県横浜市生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。臨床心理士。専門は犯罪捜査への心理学の応用。著書に『犯罪捜査の心理学』(化学同人)、『ケースで学ぶ犯罪心理学』(北大路書房)ほか多数。
昨今、様々な事件や特殊詐欺など凶悪な犯罪が増えており、ニュースで犯罪に関する情報を聞かない日はないといえます。誰もが利用するSNSを介した犯罪も当たり前になっており、より巧妙化しながら身近に潜む問題にもなっています。こうした問題や実態について研究し、犯罪予防や再犯防止に役立てようとするのが『犯罪心理学』です。
犯罪心理学は、心理学の中でも実際の現場や実践に役立つことを目的とした“応用心理学”の1つで、特に犯罪行動・非行や犯罪者の心理・行動パターンに焦点を当てた研究分野です。専門書や教科書が多いジャンルですが、本書では図やイラストを用いて、1トピックを見開き1ページでわかりやすく解説。
“普通の人”が犯罪に手を出してしまう経緯、犯行内容から見える犯人像や周囲の環境、巧妙化する手口や防犯法など、知らなかった犯罪心理学を、楽しみながらもしっかりと学べる一冊です。
公開日:2024.07.04