レイプ犯は性欲の発散が目的?【図解 犯罪心理学】
必ずしも性欲だけが動機ではない
レイプとは相手の同意なく強制的に性行為を行う犯罪で、大きく顔見知りによる「知人間レイプ」と、まったく面識のない人物による「ストレンジャーレイプ」があります。
こうしたレイプ犯罪については、長い間「性欲主導の犯罪」であると考えられてきました。つまり、性的な欲求がたまり、それが引き金となって犯行に及ぶという考え方です。しかし、レイプ犯の研究を進めていくと、必ずしも性欲だけが動機ではないことがわかってきました。
たとえば、アメリカのナイトとプレンツキーは、レイプ犯を「怒り報復型」「搾取型」「補償型」「サディスティック型」の4つのタイプに分類していますが、これを見ると性欲がおもな動機となっているのは「補償型」のみで、それ以外は性欲による犯罪というよりも、むしろ暴力犯罪の類型であると見ることができます。
また、加害者たちはレイプに先立って生活上のストレスや自尊心を傷つけられた体験をしていることが多いという研究もあり、レイプはそのストレスの発散、あるいは女性を支配することによる自尊心の回復のための行為という捉え方もされています。ただし、日本では暴力的なレイプ事件よりも、性的な動機が表面に出ているものが多く、アメリカのレイプ犯とは傾向が異なっている可能性があります。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
監修:越智啓太
監修者プロフィール
法政大学文学部心理学科教授。1965年、神奈川県横浜市生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。臨床心理士。専門は犯罪捜査への心理学の応用。著書に『犯罪捜査の心理学』(化学同人)、『ケースで学ぶ犯罪心理学』(北大路書房)ほか多数。
昨今、様々な事件や特殊詐欺など凶悪な犯罪が増えており、ニュースで犯罪に関する情報を聞かない日はないといえます。誰もが利用するSNSを介した犯罪も当たり前になっており、より巧妙化しながら身近に潜む問題にもなっています。こうした問題や実態について研究し、犯罪予防や再犯防止に役立てようとするのが『犯罪心理学』です。
犯罪心理学は、心理学の中でも実際の現場や実践に役立つことを目的とした“応用心理学”の1つで、特に犯罪行動・非行や犯罪者の心理・行動パターンに焦点を当てた研究分野です。専門書や教科書が多いジャンルですが、本書では図やイラストを用いて、1トピックを見開き1ページでわかりやすく解説。
“普通の人”が犯罪に手を出してしまう経緯、犯行内容から見える犯人像や周囲の環境、巧妙化する手口や防犯法など、知らなかった犯罪心理学を、楽しみながらもしっかりと学べる一冊です。
公開日:2024.07.29