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猛暑オリンピック。北半球は限界か!?【二宮清純 スポーツの嵐】

Text:二宮清純

パリは一昨年7月、42.6度という記録的猛暑

 近年、“体温超え”という言葉を、よく見聞きする。要するに気温がヒトの平熱を超えるということだ。

<気温が37~38℃まで上昇すると体温調節が困難になり、熱中症による命へのリスクも大きくなってきます。>(ウェザーニュース 2019年8月8日配信)

 熱中症を甘く見てはいけない。死亡者数の最多は2010年1731人。18年の1581人、19年の1224人と続く。最も多いのは東京で、19年だけで204人が亡くなっている。

 気候変動による“体温超え”は、日本に限った話ではない。カナダのブリティッシュコロンビア州リットンでは、今年6月29日、49.6度を観測した。同州では連日の猛暑により、233人の死亡が報告されている。ここまでくれば“災害級”というより“災害そのもの”である。

 猛暑の原因はヒートドーム現象だ。<高気圧が広範囲にわたって鍋の蓋のように上空を覆い、熱い空気を閉じ込めた状態>(NATIONAL GEOGRAPHIC6月29日配信)のことを指す。

 東京五輪期間中、列島も猛暑に襲われた。男子のテニスではロシアのダニール・メドベージェフが「死んだら誰が責任を取れるのか」と啖呵を切り、7月29日の試合開始時間は午前11時から午後3時に変更された。この他、サッカーや女子マラソンも猛暑を避けるため、試合開始時間を繰り下げたり繰り上げたりした。

 気の毒だったのはスベトラーナ・ゴムボエワという女子アーチェリーに出場したロシアの選手だ。

 最終スコアを確認している最中に意識を失い、担架で運ばれた。原因は熱中症だった。

<この時期の天候は晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である。>

 周知のように、2013年1月に五輪招致委員会がIOCに提出した立候補ファイルの文面だ。「嘘も方便」と言えば聞こえはいいが、無理があり過ぎた。

 だが猛暑は東京にとどまらない。2024年パリ大会、28年ロサンゼルス大会でも同様のリスクがついて回る。

 パリは一昨年7月、42.6度という記録的猛暑に襲われた。ロサンゼルスは昨年9月、観測史上最高の49.4度を記録している。

 もはや北半球において、夏の五輪開催は限界に近付いているのではないか。マラソンや競歩などは、冬に移した方がいい。手をこまねいていると大変なことになる。

初出=週刊漫画ゴラク2021年8月27日発売号